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ドールさんは、染め粉にするための材料を採るらしいので、手伝わせてくださいとついていった。
指示された通りに草や葉っぱを採る。そうしながら、還元について訊いてみた。
還元は、ものを「素」にすること。
還元をしなくなると、世界がおかしくなる。具体的には、異常気象、隕石、地形が変わる、とか。
だから、還元士(あと、めずらしいけど、還元ができるのに還元士にならなかったひと)は、世界のあちこちで還元をしないといけない。万能なお掃除屋さんという感じなのかな。
この村に還元士はふたりしかいない。隣村にはひとりもいないので、そちらへも還元にいっているそう。
なにを還元するのかと思えば、ごみの類らしい。あとあれもね、とドールさんはトイレを見遣った。成程。
つかえなくなったもの、原形をとどめていないもの、そのままだと害になるもの、動物の死骸なんかを、日々還元している訳。この辺では、人間の遺体も、お葬式をしてから還元するそうだ。
じゃあ、還元したらどうなるか、と云えば、光の粒になる。
その光の粒をしかるべく方法で集めておくと、いろんなものになることがある、らしい。
ルジュアットはよく宝石になる。やすでは肥料に。なかには、還元した生きものの鱗や、毛皮になることもある。植物の種なんかもね。
集めるのは簡単。適当に容器にいれておくだけ。光の粒(が、素なんだと思う)は触っても消えない。重さも触った感じもなくて、空気みたいだとか。
それを容器(袋なんかが一般的)へいれて放置すれば、十分から三十分くらいでなにかにはなる。
「素」になにもせず、放置しておけば、風に流されて消える。風がなくても最後には周囲へ溶けるみたいにしてなくなる。
「べつに、わざわざ集めたりしなくてもね」
ドールさんは屈めていた腰を伸ばし、軽く伸びをした。すぐに、今度はしゃがみ込んで、草をむしる。「畑を豊かにしたいのなら、虫や、食べ残しや、落ち葉なんかを沢山畑へ持って行って、そこで還元してもらえばいいの」
「そういうものなんですか」
「ええ。まあ、集めたもののほうが効果が高いのは、そうだけどね……」
ふうん。
還元士って、でも、便利な能力だなあ。ひとによってはどんなものでも還元できてしまうらしい。生きているものでも出来るひとがいるの、と、ドールさんはその部分は少しだけ、おそれているように話した。
全部自然に返せるのなら、環境にはいいのかな。というか、やらないと天災が起こるらしいから、必要な作業なんだろう。
「荒れ地を還元しようとしているひとも居るのよ。まだ巧くいってはいないけれど」
ドールさんは、どうもその試みは巧くいってほしいらしかった。




