表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に飛ばされたら適職が「魔王」しかない  作者: 弓良 十矢 No War
買いものに行ったら帰り道が異世界につながっていた
4/6659

4

 

 ちょっとぼーっとしてたら砂に埋まりかけた。昔からぼんやりなのだ。

 いろいろ衝撃すぎて笑えてきた。くすくすしながら立ち上がる。フトマルヤスデって。

 まださめないんだ。変な夢。

 さく、さく、と、砂を踏みつつ歩く。方角? 解らん。歩いてりゃあ、最初の町的なところにつくんじゃないだろうか。RPGぽいし。なんとかなるだろ。

 一時間くらいでへばった。砂の上を歩くの、尋常じゃなく疲れる。ずーーーーーーっと砂と岩山で、町らしきものが見えないのが辛い。歩くことに意味を見出せない。足の裏の皮がむけて痛い。景色が変わっているかどうかも、たまにもの凄い風が吹くからよく解らないし。

「……ちょこ!」

 そうだ、チョコがあった!

 収納空間を開いて、バッグのなかからチョコの袋を取り出した。二粒口に含む。甘くておいしい。ああ、夢遊病で、実際食べてたらどうしよう。虫歯になる。


 チョコレートで気力が少々恢復した。再び歩き出す。水も買っておけばよかったなあ。咽が乾いた。「ぅわわわわ」

 なんか踏んだ。ぐんにゃりしたもの。

 飛び退る。すわやすでかと逃げようとしたが、呻き声に停まる。

 駈け寄る。屈み込んで、砂を掻き分けた。……ひとだ。

「大丈夫ですか?」

 呻き声が返ってきた。高校生くらいの男の子だ。カフェオレ色の肌で、マントみたいなものを体に巻き付けている。顔立ちは、アジアっぽくはない。

 怪我をしているのか、脱水なのか、男の子はうんうん唸っていて砂から出てこない。腕を掴んで引っ張ってみた。「どこか痛いんですか? すみません、思い切り踏んじゃって」

「……に」

「煮?」

 煮物の話かな?

「にげろ。虫が……」

「虫」

「く、くわれ……」

 虫にくわれるぞと警告してくれているらしい。やすでさんならさっき撃退(事故)したが、あれクラスがうじゃうじゃいるんなら逃げたい。

 だからといって、ほっぽらかしていくのはなあ。「まあまあ、掴まって」

「おれは、だめだ。あしをおった」

「ああ、怪我してるんですね」

 だったらはやく云えばいいのに。

 ポーチからがらす壜を取り出す。形は、痩せた雫型だ。首にタグがひっかかっていて、「傷薬(中)」と書いてある。中身は透明で、きらきらしている。

「えーと……」内服? 塗布?

 栓を抜いた。試しに口に含んでみる。なんか……コリアンダーとローレルとミントを煮だしたみたいな……ハーブティみたいな味だ。ちょっとアルコールも含まれてる感じ。

 ごくんと嚥みこむと、効果覿面。足裏の痛みが引いた。内服だな。「どうぞ」

「?」

「お薬です。どうぞどうぞ」

 訝しげなのへずいと差し出す。()まない。

「……えい」

 壜の口を唇に押し当てて傾けた。男の子がむせる。壜を引っ込めた。「おまえっ、いきなりなにっ」

「え、だって怪我してるっていうから。お薬」

「そうじゃなくて……ああん?」

 男の子は振りまわしていた手を下ろす。数拍あって、その手をつくや、砂から抜け出してきた。おー、とわざとらしく感心して拍手する。

 砂から出てくるとかなり身長がある。185cmくらい? あしなげえ。

 立って、服についた砂を払い落とす。よしよし、案内人確保だ。

 男の子はなんともいえない表情で、あしの具合を慥かめている。こっちは伸びをした。「んーっ。大丈夫ですか、あし」

「……まあまあ」

「ありゃまー、じゃあのこりもどうぞどうぞ」

 薬をおしつけると、今度は素直に服んだ。壜を返してくれる。「ありがとう」

「いーえー。あのー、つかぬことをうかがいますが?」

「ああ……って、話してる場合じゃない、逃げるぞ」

「えっ」

 腕を掴まれ、そのまま引き摺られる。「えー」

「また虫に出くわしたらことだ」

「ああ、はい」

 ……町に近づいてるっぽいし、いいかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
[良い点] 今のところは面白いてす [気になる点] わざわざ難しい漢字を使うのはなぜ? 瓶とか回復じゃ駄目なの?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ