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この村は互助の精神が強く、隠しごともほとんどないみたいで、結構な情報が耳にはいることもあった。
ついでに、誰もそれをおかしなことと思っていないらしく、かなり個人的な(と俺が感じるような)ことでも、平然とみんなの前で相談したりしていた。子どもをどこかに修行? にやりたいけどお金がこれだけしかない、旅費にもならない、とか、少し離れた村にぼけてしまった父親が居てひきとりたいけど抵抗されている、とか、そういうことだ。俺はどうも、その手の話題はふみこんではいけないものだという頭があるので、耳にはいるが定着はしてくれなかった。
俺がその場にまざりこんでいても、みんな自然に会話していたし、俺を会話にひきいれてくれさえした。
村の事情がわからないので、俺は曖昧に言葉を濁すことのほうが多かった。でも、それで場の空気が悪くなることもなかった。難しいことだから簡単に云えないわよねえ、みたいにフォローしてくれるひとがかならず居るのだ。
みんな、優しくて、でもおしつけがましくなくて、やわらかいふわふわした時間を過ごした思い出がある。魔王がばれないか、と四六時中怯えていなかったら、もっと楽しくお喋りできていたかもしれない。
あ……そっかあ。
もしかして、ここでなにか、おせったいみたいなことがあるのかな。ほーじくんとサーダくんは、わかりやすく祇畏士だし、たしか行の行き・帰りどちらでも、祇畏士はもてなすと云っていなかったっけ。
祇畏士をどこでもてなすかは聴いていなかった。し、行の行き・帰りの祇畏士をもてなすという時、俺はダストくんの家から出ないように云われていた。だから、そういう場合どこに祇畏士達が居て、もてなしをうけているのか、知らない。
今なら、俺が外出を制限された意味はわかる。妙な誤解を防ぐ為だ。ロア人やディファーズ人の一行だったら、問答無用で攻撃してくるかもしれないしな。俺はこの村に居た段階から、いろんなひとに便宜を図ってもらい、まもられていたのだ。
そんなことに今頃気付くなんて、ばかばかしい。
細かい模様の織物をつるした出入り口から、ルルさんがとびだしてきた。喜色満面で俺を抱きしめてくれる。
俺は吃驚したが、すぐにルルさんを抱きしめ返した。ルルさんはいつものようにヘジャブをかぶっていて、その飾りがしゃらしゃらと音をたてる。彼女はこちらの世界の女性にしては、考えられないくらいに着飾っている。多分、なにかの効果がついた装備品なのだろう。




