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俺は今まで書いていた意味のない落書きを、足でざざっと消した。ほーじくんがびくつく。
ならした砂に、両手をつかって八角形を描いた。その向こうに、同じくらいのサイズの円も。
これで通じないなら、もうどうしようもない。
俺は椅子の脚を置いて、ほーじくんを見た。ほーじくんは戸惑った様子だ。俺は絵とも呼べない砂の上の八角形と円を指さす。
ほーじくんは訝しげにそれを見た。その格好で、数回、瞬く。じっとしている。
それから、はっとして俺へ顔を向けた。なにか云っているが、聴きとれない。ああ、ほーじくんもこういうふうに喋るんだ。
俺はただ、砂の上を指さしている。風が吹いて、すぐに見えなくなってしまった。
風が和らいできた。
馬車が来る。音でわかる。俺はほーじくんと腕を並んで、壁の外に立っていた。ほーじくんは俺の絵を理解してくれたのか、してくれていないのか、とにかく頷いてはくれた。エクシザは我関せずという感じで、俺達が意思の疎通を図ろうと頑張っていても黙っていた。エクシザなりに気を遣ってくれていたのだろう。
前の馬車の御者はネクゼタリーさんだった。馬車の速度がゆるむと、ほーじくんがぱっとそれに近付いて、御者台にとびうつる。
馬車が停まった。後ろのもだ。そちらはリッターくんが御者をしている。
俺はゆっくりと、前の馬車へ近付いていった。後ろの馬車の扉が開いて、ニニくんがおりてくる。杖を掴んでいた。馬車のかげからタスが歩いてきた。
ニニくんはこちらへ来ると、俺の手を掴んだ。恢復してくれる。必要ないのに。ああ、心配してくれていたんだな。
御者台を見る。ほーじくんの向こうにちらちら見えるネクゼタリーさんは、無表情だった。
ほーじくんが戻ってきて、馬車をゆびさした。のって、ということだろう。俺は頷いて、ステップに足をかけた。ニニくんはタスにひっぱられていく。
ユラちゃんは不機嫌だったけれど、なにも云わない。サーダくんも不機嫌だ。ほーじくんはこちらの馬車にのらなかった。
俺は壁によりかかる。通じたのか、通じていないのか、わからないし、もう考えたくない。でも、ほーじくんがネクゼタリーさんと話していたから、なにかは伝わったのじゃないかな。俺がどこかへ行きたがっているとか、なにかをほしがっていると思ってくれただけでもいい。
それが天罰を終わらせるなにかかもしれないと思ってくれれば。




