37
異世界三日目の朝、ちょっと試してみた。結論・崩潰はムダ毛処理に便利。
凄く下らない。
なにをしてるんだ俺はとは思った。でも、魔法に慣れておかないと、祇畏士に狙われた時対処できない。
いざとなったら崩潰で怪我をさせて逃げよう。……そんな器用なことが自分にできるのかはさて措いて、想定しておくのは大切だ。とりあえず皮膚を傷付けないくらいにはコントロールもできたし!
ちょっとひりひりしたので、小川の水でグリセリンを二滴くらい溶いて塗っておいた。グリセリンは正義。
朝ご飯をもらって、片付けを手伝った。今日はオーブンを見に行く約束だ。
が、なんだか先方の都合が悪いとかで、今日は外出中止になった。
「そうそう」ドールさんはにこっとわらう。「蜂蜜は、リーリに渡しておいたわ。ありがとうって、彼女喜んでる」
それはよかった。異世界産の蜂蜜だが、ドールさん曰く品質は高いらしい。
片付けが終わり、はなれへ向かう。今日は魔法の練習をしようかな。「にゃっ?!」
顔からなにかにぶつかった。
それはともかくなぜ吃驚すると変な声が出てしまうのか。せめてもう少し歳相応の声にならないか。
自分に絶望しつつ、ぶつかって落ちたなにかを見下ろす。
まっしろいふわふわ。
???
屈み込んだ。真っ白いふわふわは、小銭入れくらいのサイズで、細かく震えていた。
つつく。反応があった。……いきもの? 毛玉が?
そっと両手で拾ってみた。軽い。ふわふわを掻き分ける。
「おお」
目玉らしきものがあった。緑の目。が、みっつ。いや、やっつ? 蜘蛛に似た感じ。かわいい。なにこれ?
重さはあんまりない。掌でふるふるしている。生き物なんだろうけど……魔物じゃないよな?
ふわふわが浮き上がった。数cm。かわいいな。ふわふわはそのままふらふらと上昇していく。
「うわあー」
見上げてみれば、似たようなやつが多数、ふわふわと浮いていた。
衝突事故で墜落したやつが群れにまじり、そのまま風に乗って流れてゆく。たんぽぽの綿毛を飛ばしたときみたいだった。
「あら、ルジュアットね。めずらしい」
笊を手に出てきたドールさんが、手庇してそれを眺めた。
「るずあっと、ですか?」
「ルジュアット。縁起がいいの。還元したら宝石になることがあって、乱獲されて……減っちゃった。最近はまた増えてきてるらしいけど」
ほう。還元まじ解らん。
今日は魔法の練習より、還元のことを詳しく知ろう。




