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廃帝花の実をかじった。今日は、間食でもなんでもしてやるんだ。
こんなに気分が悪い日はない。
さそりは引きも切らない。俺はすべて、偸利でひからびさせた。さそりって繁殖力が強いんだろうか。それとも縄張りの問題なのだろうか。いつまでもいつまでも、だらだらと援軍がやってくる。
廃帝花の実をみっつ食べたくらいだった。俺の周囲に居るさそりが突然、動きを停め、吹き付ける砂に埋もれるままになった。
「マオ」
仰ぐ。
ほーじくんが舞い降りてきた。
使役されていると、使役している者の位置がわかる。だから、ほーじくんは俺の居る場所がわかったんだ。
今のは、清絶、かな。多分。俺は状態異常にならないか、なっても即座に治るので、さそりにかなり近寄られても特にこわいという感情がわかなかった。それで、自分にとって丁度いいくらいの距離まで、近寄らせていた。
でも、ほーじくんにとってみれば、さそりの毒はこわいものだ。だから、清絶でなんとかしてくれた。
ほーじくんは俺の前に降り立ち、口を開いたが、びくっとして振り向いた。杖を持っていない。なにも持たずに、来てくれたらしい。
ほーじくんは、魔を滅却している。素よりも魔は、その場にとどまっている時間が長いみたいだ。感覚として、そう。だからここには、かなりの魔がある。
俺にはわからないが。
ほーじくんは魔を滅却し、また出てきたさそりを恩寵魔法で殺した。そうしてから、俺へ向き直り、ひょいとかがみこむ。
俺は目を逸らしていた。ほーじくんは俺の頬へ触れ、やわらかい調子でなにか云う。それがなんなのか、わかったらいいのに。
ほーじくんは口を噤み、立って、エクシザへ両手で触れた。多分、お礼を云っている。エクシザが満足そうに、目を細くした。
エクシザが少し横にずれ、ほーじくんは俺の右隣に座った。肩と骨盤が触れる。脚が触れる。
俺は左手で握った椅子の脚で、砂に意味のない落書きをしている。
ほーじくんが身をのりだすみたいにして、それを見た。つぶやく。筆談もだめだ。俺はこちらの文字を書けない。ほーじくんがこちらへ顔を向けているが、苦笑いするしかない。
筆談はだめだけど、絵なら通じるかも。
唐突にそんなことをひらめいた。俺ははっと息をのむ。ほーじくんが心配そうに、小首を傾げる。
でも、絵で、井をどうやって伝える。
俺は井には、一度しか行ったことがない。それも無人のもの。特徴もわからない。ただ、井の建物について知っていることがあった筈。
八角形だ。八角形の回廊みたいなのと、水源のセット。それが井。




