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ほーじくんは無言で兄へ向かっていった。ネクゼタリーさんがそれに気付いて、弟を見る。
ほーじくんは兄のローブの首の辺りを掴むと、ぐいとやって、ニニくんからひきはなそうとする。ネクゼタリーさんは低声で、多分、抗議した。
ほーじくんは低く、激しい調子でなにか云い、ネクゼタリーさんに指をつきつける。ネクゼタリーさんははじめて、つめたい表情を見せた。とてもひややかな眼差しだ。ほーじくんの指を払いのけ、低声で返す。
ほーじくんがネクゼタリーさんの腕を、拳を振り下ろすみたいにして殴った。ネクゼタリーさんの腕がニニくんから離れた。
俺は余計なことをしたのかもしれない。
ほーじくんはニニくんのローブを掴み、ひっぱる。ニニくんを馬車へ戻そうとしている。
ニニくんは呆然としていたが、見もせずにほーじくんの手を乱暴に振り払い、杖を拾い上げた。ネクゼタリーさんの腕を掴み、治療している。とても必死な様子だ。
ネクゼタリーさんはそれを哀しそうに見ていた。とても哀しそうに。どうして哀しそうなのかわからない。
ほーじくんはせなかの羽がぶわっとふくらんでいる。かなり、怒っているように見える。
ニニくんは安心させるみたいに、ひきつった微笑みをネクゼタリーさんへ向け、やわらかい調子で喋った。それから、ほーじくんへ顔を向け、低声の早口で喋る。まだ、ひきつった、ぎこちない微笑みだ。
その左目頭からひと筋だけ涙が流れた。ほーじくんはもう一度、ネクゼタリーさんへ掴みかかった。
俺の脇を通ってリッターくんがほーじくんに組み付いた。
リッターくんは、ほーじくんと同じ馬車に居た、と思う。俺がほーじくんをつれだして、なかなか戻らないから、さがしてくれたのだろう。
リッターくんがなにか喋っている。ほーじくんは彼らしくなく、それなりに強い調子で、多分云い返した。ネクゼタリーさんは険しい表情で、ニニくんはおろおろと、ネクゼタリーさんとほーじくん達とを交互に見ている。
もうこんなのはごめんだ。
俺は数歩、後退る。
きっと俺の所為でなにかがおかしくなっているのだと思った。
サーダくんが泣いてしまったり、ニニくんともめたらしいのもそうだ。ユラちゃんやリッターくんがご飯をおいしくなそうに食べているのもそうだ。ほーじくんがお兄さんと喧嘩みたいなことをしているのもそうだ。
なにもかもがいやになった。
俺は踵を返して、強い日光のなか、砂を踏んで走った。
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