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馬車は、今日もサーダくんと一緒だけれど、ほーじくんは居ない。かわりにユラちゃんがのっていた。サーダくんは座席で膝を抱え、膝へ顔を埋めて、動かない。ユラちゃんは俺が渡したお菓子を食べていたが、おいしそうには見えなかった。サーダくんとユラちゃんには会話はない。というか、ぴりぴりしている。
お昼が来たけれど、もう幕屋はつくらない。全員が馬車のなかへ逃げることにしたようだ。せまいけれどそれでも事足りる。それに、西へ行くほど気温差は少なくなっているから、少しの休憩ですむ筈。
食糧を配っていると、ニニくんがネクゼタリーさんのところへ行って、なにか話しかけ、ふたりは俺の視野から外れた。
俺にはよくわからない感情、または関係が、ふたりの間に醸成されつつある。それはなんとなく理解した。理解はしたが、納得はしていない。どことなく、変な感じがする。自分がなにか間違っている気がする。
それとも世界のほうが間違っているのか。
俺はふたりを追いはしなかった。ヨヨが一緒に行ったからだ。ヨヨが居れば、こわいことは起こらない。そう信じた。修復者は誰にとっても重要な神さまだもの。ニーバグを粗末に扱うひとは居ない。
それが正しいのか間違っているのか、そんなのはもう考えたくもない。
ヨヨが戻ってきて、お菓子をあげるとまた居なくなった。その歩いていった方向で、ふたりは馬車のかげに居るのだとわかった。まさか、ふたりきりで(正確にはヨヨも一緒だが)どこかへ行ってしまうことはない。誰だってそんなばかはしない。
扉を閉めようとすると、ニニくんの高い声がかすかに聴こえた。俺は耳を塞いでいたかった。自分がなにをしたらいいのかがわからない。判断材料が少ない。
結局、俺は馬車を出た。同じ馬車に居るユラちゃんが俺を追うようなそぶりを見せたが、さっき衝立を出しておいた方向を示すと席へ戻った。
すぐ外に居るエクシザがついてきた。それは感謝すべきことかもしれない。このあと自分がなにを見るのか、なにをするのか、自分でもわからない。
ニニくんは泣いていなかった。馬車にせなかをつけて項垂れ、その前にネクゼタリーさんがひざまずいている。ゆるしを請うみたいに。
それがちらっと見えて、俺は早速後悔し、ふたりからは見えないだろうところまで戻った。ネクゼタリーさんは真剣な顔で、ニニくんを仰ぎ、その手を両手で握っていた。なんの話か、推測もできやしない。




