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戻って十日目。起きると幕屋には誰も居なかった。俺は大幅に寝過ごしてしまったのだ。
外へ出ると、すぐにユラちゃんに捕まった。サーダくん達の馬車を示してから、なにかの仕種をしている。
そこへ、リッターくんが来て、油紙をひらひらさせた。なにかを包んでいたものだろう。ユラちゃんがはっとして、小さな包みを俺の手に握らせる。開くと、ドライフルーツとナッツ、干した魚が出てくる。
サーダくん達が持ってきた食糧を食べたから、朝ご飯は要らない、だと思う。多分。
俺は頷いた。朝食を出せなかったと思っていたので、よかった。
俺は包みをしっかり握って、息を吐いた。ユラちゃんが身振り手振りしながら喋っているが、当然頭にはいってこない。こちらの言語は難しすぎる。特殊能力という救済措置が、転移してきた人間にあるのは、神さまの慈悲だ。
ほーじくんが来て、リッターくんと真顔で言葉を交わし、そのままふたりでどこかへ行った。ユラちゃんから目を逸らし、俺はふたりを見る。砂に隠れて見えなくなる。なにを話していたんだろう。俺に聴かれたくないことだろうか。聴こえてきたって今は理解できない。
言葉が通じなくなってから、妙なプレッシャがある。もしかしたら置いていかれるのではないか、とか、天罰がふりかかったと思われているとしたら、置いていかないとしても荒れ地を出たらみんな離れていくのでは、とか。
そんなくだらないことだ。
そうやってひとを信用できないのはばかばかしくて愚かしいとわかってる。
身繕いして、包みの中身を食べた。おいしかった。ディファーズは海に面しているから、魚を食べると聴いている。干し魚は絶妙な塩加減で、ナッツと一緒に食べるとなんとも云えずおいしい。
ネクゼタリーさんとカルナさんミエラさんで、幕屋を解体しているのを、なんとなく眺める。資材はまとめられていて、あとで俺が収納することになっていた。というか、今までがそうだったから、今回もその筈だ。
昨夜のことは、結局なんなのか、未だにわからない。でも、ネクゼタリーさんと、カルナさんミエラさんは、特にぴりぴりした空気ではない。それが、もうもめごとに決着がついたからなのか、それともディファーズ人は表面上とりつくろうのがおそろしく上手なのか、そのどちらかは知らない。
ユラちゃんはつかずはなれずの距離で、つったって朝食をとる俺の傍に居る。彼女が俺の護衛ということらしい。ほーじくんは姿が見えない。リッターくんと一緒なんだと思う。




