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タスの為のくだものがのったお皿だ。リッターくんはそのまま、馬車へ向かった。タスへご飯を持っていった、ということだ。
ユラちゃんはタスに、幕屋へ這入るなと云ったんだろうか。それで、タスが納得した、ということ?
どうして幕屋からとおざけたんだろう。どうしてタスは、抵抗せずにそれに従ったんだろう。
俺の知らないなにかがある。おそらく天罰に関するなにか。伝承、伝説、口承、と云ったもの。よそ者である俺が知らないなにかだ。
食器は、洗っただけで収納空間へ仕舞い、すべて洗い終わってから一枚ずつとりだしては拭き、とりだしては拭き、して、また収納している。
ユラちゃんとタスのやりとりや、ユラちゃんがリッターくんに指示をしたらしいのも、それをしながら見ていた。終わったので、タスの様子を見に行こうか、と思い、ユラちゃん達の馬車へ向かおうとする。
が、ユラちゃんが俺のローブを掴んだ。ぐいっとひっぱられ、そちらを向く。
ユラちゃんは険しい表情で、ゆっくりと一回、頭を振った。その後、あいた手を動かす。
その表情と、「否定」の意思が強く伝わってくる頭を振るという動作で、タスに近付いてはいけないらしいとわかった。俺は頷いて、馬車を示し、それから頭を振る。
ユラちゃんは驚いた顔をして、ローブをはなした。というか、手の力がぬけてしまった、という感じだ。彼女は早口で喋るのだが、俺はまた苦笑いする。
だが、ユラちゃんの表情は、なんだか嬉しそうなものになった。両手を振ったり、右手の指を立てたり握りこんだりする。多分、手話だ。
アクリダさんジャラードさんと接する時、それが楽だからと筆談がほとんどだったのを、ちょっと悔やんだ。折角、実際につかう機会があったのだから、手話を学んでおけばよかったのだ。
しかし、そんなことを今から云っても仕方ない。俺は苦笑いしているしかない。だって、手話って難しいじゃないか。もとの世界の手話も、少ししかできない。あれはひとつの言語だから、簡単に学べるようなものじゃないのだ。
スキルでは身体言語までは翻訳してくれなかったし、俺は別の世界育ちなのでこちらのハンドサインはよくわからない。こちらの感覚でできている手話がわかる素地はない。そこから勉強するのは正直、骨が折れる。
俺が芳しい反応を見せないからだろう。ユラちゃんは肩を落とした。けれど、表情は少し、明るいものだ。泣きそうな顔ではない。「強い否定」だけでも、俺にまともに通じたのが、嬉しいのかもしれない。あの手の動きが、そういう意味だったのかな。




