表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3883/6869

3741


 タスの為のくだものがのったお皿だ。リッターくんはそのまま、馬車へ向かった。タスへご飯を持っていった、ということだ。

 ユラちゃんはタスに、幕屋へ這入るなと云ったんだろうか。それで、タスが納得した、ということ?

 どうして幕屋からとおざけたんだろう。どうしてタスは、抵抗せずにそれに従ったんだろう。

 俺の知らないなにかがある。おそらく天罰に関するなにか。伝承、伝説、口承、と云ったもの。よそ者である俺が知らないなにかだ。


 食器は、洗っただけで収納空間へ仕舞い、すべて洗い終わってから一枚ずつとりだしては拭き、とりだしては拭き、して、また収納している。

 ユラちゃんとタスのやりとりや、ユラちゃんがリッターくんに指示をしたらしいのも、それをしながら見ていた。終わったので、タスの様子を見に行こうか、と思い、ユラちゃん達の馬車へ向かおうとする。

 が、ユラちゃんが俺のローブを掴んだ。ぐいっとひっぱられ、そちらを向く。

 ユラちゃんは険しい表情で、ゆっくりと一回、頭を振った。その後、あいた手を動かす。

 その表情と、「否定」の意思が強く伝わってくる頭を振るという動作で、タスに近付いてはいけないらしいとわかった。俺は頷いて、馬車を示し、それから頭を振る。

 ユラちゃんは驚いた顔をして、ローブをはなした。というか、手の力がぬけてしまった、という感じだ。彼女は早口で喋るのだが、俺はまた苦笑いする。

 だが、ユラちゃんの表情は、なんだか嬉しそうなものになった。両手を振ったり、右手の指を立てたり握りこんだりする。多分、手話だ。

 アクリダさんジャラードさんと接する時、それが楽だからと筆談がほとんどだったのを、ちょっと悔やんだ。折角、実際につかう機会があったのだから、手話を学んでおけばよかったのだ。

 しかし、そんなことを今から云っても仕方ない。俺は苦笑いしているしかない。だって、手話って難しいじゃないか。もとの世界の手話も、少ししかできない。あれはひとつの言語だから、簡単に学べるようなものじゃないのだ。

 スキルでは身体言語までは翻訳してくれなかったし、俺は別の世界育ちなのでこちらのハンドサインはよくわからない。こちらの感覚でできている手話がわかる素地はない。そこから勉強するのは正直、骨が折れる。

 俺が芳しい反応を見せないからだろう。ユラちゃんは肩を落とした。けれど、表情は少し、明るいものだ。泣きそうな顔ではない。「強い否定」だけでも、俺にまともに通じたのが、嬉しいのかもしれない。あの手の動きが、そういう意味だったのかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ