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俺について、話し合っているんだろうか。たまにネクゼタリーさんが俺を見て、安心させようとしているのか、笑顔で頷いていた。そうするとほとんど完全に目が閉じてしまって、なんとなくツァリアスさんに似ているような表情になる。満腹の猫、という感じ。年齢は、二十代中頃、かなあ。
弟が無事見付かったのだから、俺のことは気にしなくていい。それに、これは井でお水を汲んで飲めば解決する。
だがそれを伝えられない今、俺は奇妙な病気になったか、天罰で言葉を奪われたか、どちらかだと思われてもおかしくないのだ。
ユラちゃんがさくさくと砂を踏んでやってくる。リッターくんが数歩遅れて、それにつきしたがっていた。
ユラちゃんは俺の傍まで来ると、こちらを見てなにか云おうとしたみたいだが、結局言葉を発することはない。小さく鼻を鳴らして、馬車のステップにとびのる。リッターくんがその横に並んだ。リッターくんはステップに足をかけてもいないが、それでもユラちゃんより背が高い。
「マオ」
と、また聴こえてきた。今度は、甲高いユラちゃんの声で。
彼女は小さいので、俺からはユラちゃんの頭越しにティヴァインの兄弟達がよく見えた。眉根を寄せて動かないサーダくんと、無表情で時折頷くネクゼタリーさん、沈痛げな面持ちのほーじくんが、だ。
ユラちゃんが肩越しに俺を見て、ひょいとゆびさした。また、ティヴァインの兄弟へ向き直り、なにか云う。甲高くて抑揚のついた声だが、それが怒っている声でないのはなんとなく理解できる。
ティヴァインの兄弟は、低声で話し合いをはじめた。ユラちゃんはステップをとびおりて、着地に失敗し、かがみこんで痛そうに呻く。ヤラがすぐに治療していた。砂ってあしをとられるよな。
話がどういうふうに決着したのか知らない。わからない。
だが、俺はサーダくんにひっぱられて、サーダくん達の馬車にのっていた。車輪や車体に模様はないから、かし馬車だと思う。トゥアフェーノもそうだろう。そもそも、ふたりだけでさがしに来たみたい。ほーじくんが云っていたことはあたっているんだろう。自殺をしようとしていると思われているのでは、というやつだ。それに近い状態だったし、祇畏士として彼は今それよりももっと不名誉な事態に陥っている。悪しき魂を持つ魔王につきまとわれているのだから。
実際のところ、俺の存在は彼には迷惑だ。その上、こんな厄介な情況になっている。いつほーじくんの気持ちが折れるか、わからない。
「わからない」ばかりだな。




