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白桃色の髪のひとが、俺に気付いた。ぱっと表情を明るくして、なにか云いながら軽く頭を下げる。あ……今多分、聴きとれた。
このひと、ほーじくんのお兄さんの、ネクゼタリーさんだと思う。人名は翻訳しようがないから、抑揚が凄いけど聴きとれないことはない。
ってことは、今、自己紹介してくれたのかな。ああ、どうしよう、折角ほーじくんのお兄さんと会えたのに、俺、まだ喋れない。
動揺してしまった。俺はあしを停め、ティヴァイン家の兄弟を見詰める。どうしよう? なんと云ったらいいんだろう? なにも云えない。
口をぽかんと開けてかたまっていると、サーダくんが顔を上げ、こちらを見た。ネクゼタリーさんが云ったことが聴こえていなかったのかな。はっと息をのんで、目許を乱暴に拭い、こちらへ向かってきた。
ぎゅっと抱きしめられる。俺は吃驚したけど、反射的に抱きしめ返していた。サーダくん、かなり華奢だな。それとも、ほーじくんが居なくなったのが心配で、痩せてしまったのだろうか。
サーダくんは喚いている。声の調子では、感激しているのか怒っているのか哀しんでいるのか、わからない。俺は仕方なく、サーダくんのせなかをぱたぱた撫でた。それくらいしかできない。
ネクゼタリーさんがやってきて、サーダくんを宥め、俺からひきなはした。ネクゼタリーさんは俺に微笑み、喋る。
サーダくんがネクゼタリーさんに抱き付いて、まだ泣いている。ネクゼタリーさんは苦笑いで、なおも宥めているようだった。
ほーじくんがとぼとぼ、やってきて、俺のローブの袖を掴んだ。よかったね、と伝えたいのだけれど、なにも云えない。俺は微笑んで、彼へ頷く。
ほーじくんは哀しそうだった。
リッターくんとユラちゃんがやってきて、ユラちゃんがネクゼタリーさんと喋る。ユラちゃんに手招かれ、ニニくんとタスも来た。ユラちゃんに指示されて(と思う)、ニニくんが喋る。おそらく、俺のことを説明している。
大半、小さな声でニニくんが喋っていたが、時折ユラちゃんが、なにかを付け加えた。ふたりが話す程に、ネクゼタリーさんの表情が、段々と険しくなっていく。
ニニくんが口を噤み、ユラちゃんがなにか云いかけたところで、ぱっと、サーダくんが顔を上げた。悲痛げな声を出す。ぶるぶると、ネクゼタリーさんのローブを掴む手が震えていた。杖を掴む手が白くなっているニニくんが、申し訳なそうになにか云うと、サーダくんは糸が切れたように気を失ってしまった。
俺は息をのんでかたまった。




