表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3866/6868

3724


 時折リッターくんが口をはさむのだけれど、リッターくんも声自体はかわらないが、喋りかたの印象は全然違った。

 少し低い声から、高めの声まで、こちらの言葉は実際には凄く抑揚がつく。俺の耳に聴こえていた日本語とは、まったくの別物だ。本当に、歌と云われたら信じる。それくらいに音に起伏がある。

 いつも淡々と、どちらかというと平板な調子で喋るのがリッターくんのイメージだ。今だって、表情なんかはやっぱりあんまりないし、語気が強いという訳ではない。でも、歌うみたいに上下する調子の喋りかたはなんだか、リッターくんらしくないような、そんな変な感じがしてしまう。

 きっとこの子はずっとこの喋りかたで、俺の言語スキルがロックされたから結果としてそれが聴こえるようになったにすぎないのだろう。けれど、なんだか、変なことのように感じる。慣れなんだろうな。


 ユラちゃんは段々と、口を噤むことが増えていった。目がかすかに潤んでいる。俺が突然、なにを云っても苦笑いで流すようになってしまったのだ。彼女はそれを、どう考えているだろう。

 みんなが眠ってからならなんとかできると思うから、明日には誤解を解きたい。あちらの世界のことを説明し、あちらとこちらの言葉がまったく違うことを説明し、言語がわかる特殊能力がつかえない状態だったと説明し……大仕事だな。

 ユラちゃんが完全に黙り込んだので、俺はどうしようもなく、彼女の腕を軽く叩いた。ユラちゃんははっとして俺を見るが、俺が喋ろうとしないからだろう、顔をしかめ、ぱっと立ち上がる。そのまま、滑るように砂を降りていった。走って幕屋へ向かっている。悪いことをしてしまったかもしれない。


 リッターくんがなにか云うが、俺はまたしても答えられない。リッターくんを見るだけだ。

 リッターくんもかすかにこちらへ顔を向け、俺を見ている。その状態で、お互い黙りこくっていた。もともと、リッターくんは口が重たいし、俺は今、こちらの言葉を喋れない。

 ほーじ、とリッターくんが云ったのは聴こえた。ぼんやりしてしまっていた俺は、リッターくんの顔にしっかりと焦点を合わせる。リッターくんはたしかに、ほーじ、と云うのだけれど、それ以外の部分が聴きとれない。

 リッターくんは、同じことを二回云ってくれた、みたい。俺がかんばしい反応を見せないからか、リッターくんは俺の肩を数回、優しく叩いて、立ち上がり、砂をおりていく。その前にも、ほーじ、と云っていたのだけれど、彼がなにを伝えたいのか、わからない。

 それが凄くもどかしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらも宜しくお願いします。 ループ、あの日の流星群
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ