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口のなかに凄まじくまずいものを詰め込まれて目が覚めた。勢いよく上体を起こす。
吐き出そうとしたが、味からすると魔力薬だ。俺はすーっと息を吸い、ちょっとためらったのちにそれをのみこんだ。うえっ。
涙のういた目をこする。自分で服むぞと思って服むのと、他人に口へ詰め込まれるのとは、違う。今まで散々服んできたが、あれは服むのにそれなりの覚悟とか決意とかを必要とするものなのだ。
四辺を見た。俺はベッドに居て、足許にリッターくんとユラちゃんが立ち、俺の右側にタス、左側にほーじくんが居る。タスが服で手をぱたぱたしているので、俺の口に魔力薬をおしこんだのは間違いなくタスだ。抗議しようとしたが、今は言葉が通じないのだと思い至る。
収納空間からお水をとりだして飲んだ。ぴょんっとなにかがベッドに上がってきたので、見てみると、ヨヨだ。心配そうに目を細くしている。「ヨヨ」と云ったのは聴きとれたのだが、それ以降はところどころしかわからない。心配してくれているみたいだ。
「ヨヨ。通じない? 俺の言葉」
俺の低声に、ヨヨは驚いたみたいに、みか、と云う。ヨヨにとって、あっちの世界の印象は妹一色のようだ。で、まだロック解けてないのな。ちゃんと手順踏まなきゃか。
俺は苦笑いでベッドを降りた。なんとなく肌寒い。……もう日が暮れたのか。眠ったからだいぶすっきりしたけど、悪いことしたな。今日にも荒れ地をぬけだせるのじゃないかって話だったし、ニニくん達の体調も、余裕はないのに。
収納空間から、必要なものをとりだした。ベッドやブランケット、ローブなどだ。
無言で作業する俺に、リッターくん以外はみんな戸惑った様子だった。俺は出すべきものを出してしまうと、外に出る。簡易トイレはもうつくられていた。それがくらく、星が出ている。タスが、どこへ行くんだ、みたいに云った、と思う。多分。それをちゃんと聴きとったのか、そんなふうに聴こえたからそう聴こえたと思い込んだのか、わからない。
説明のしようはないので、俺は説明しなかった。
用を足し、砂の丘をちょっとのぼった。幕屋から少しはなれたところだ。収納空間から新鮮なくだものをとりだし、偸利をつかってみる。
くだものはあっという間にしわしわになって、ぐしゃっとつぶれ、風に飛ばされていった。
つかえた。当然か。言語スキルととってないひとでも魔法はつかえるってことだ。じゃなきゃいろいろ厳しすぎるもんな。




