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気を失っていたらしい。目を覚ますと、心配そうに俺を見ているほーじくんと、ヨヨ、ユラちゃんが見える。俺はまだぐるぐるする視野に吐き気を覚えながら、なんとか笑みをうかべようとした。
「ごめん、寝てた?」
ユラちゃんが泣くような声でなにか云い、俺の肩をちょっと揺すぶる。ほーじくんは顔色が悪くて、ユラちゃんの言葉に小さく頷いていた。
ニニくんも見えた。そのすぐ隣にタスも。ふたりは深刻そうな顔で話し合っているが、言葉がどうにも聴きとれない。歌うような調子の、やわらかくて自然な言葉だ。ニニくんが項垂れ、タスがそれをはげますみたいに肩を叩いた。
メニューを開く。どうせ、誰にも見えやしないのだ。
案の定、俺が宙をなぞっていても、ユラちゃんもほーじくんも驚いた顔はしない。多分、意識が混濁していて、幻覚でも見ていると思っているのじゃないかな。ふたりとも俺の肩を軽く叩き、なにか云っている。やっぱり歌うような、それに口笛のような音が時折まざる、まるで、小鳥をまねた優雅な歌みたいな言語だ。鳥が沢山放された植物園を思い出した。いいよね小鳥。俺、鳥って好きなんだ。
眩暈はまだあるのだが、メニューだけはしっかり見える。俺はウィンドウを殴りつけたい気持ちを抑えた。「言語:異世界LV.MAX ※???逅???ィゥ髯舌↓よりロックされました。解除のてつづきに縺ッ荳記のリンク繧偵◆縺ゥ縺」縺ヲ縺上□縺い。縺ィ縺上@繧??縺?j繧?¥のロックを險ア蜿ッされ」だってよ。それ以降もなんかずらずら書いているが、完全に文字化けしていて読めない。
要するに俺は、異世界二年弱にしてはじめて、コミュニケーションに大きな比率を占める「言語」を失った。
収納空間はつかえるし、魔力の譲渡はできた。ためしにほーじくんとタスにやってみたら、たしかに魔力の減った感じがしたし、ふたりが怪訝な顔でこちらを見たからだ。
ほかの特殊能力、それに多分、職業加護も、ロックされては居ない。そんなに火薬について喋られるのがいやなのか、開拓者。そういうプログラムなのかもしれんけど。
多分、リンクを辿れと書いているのだろうと思って、下に表示されていたものをタップした。文字化けはしていなかったし、特に難しいことは書いていない。でも今は吐き気がするので体を起こしたくない。
言語を奪われたのはショックだ。けど、それよりも頭痛と眩暈がきつい。死ななかっただけよかったんだろうが、不快感はなかなかのものだった。ちょっと眠りたい。
眠るね、と云えたらいいが、さっきの感じだと俺の言葉は誰にも通じていない。ああ、不便だな。
俺はスキルのロックを解除するのは後回しにして、もう少し眠ることにした。目を瞑って、そしたらすぐに眠れたのだ。




