3716
当然、言葉は通じないのだが、槍は持っているしかぶとで顔を覆っているし、というか多分、襲われたほうは「クリーチャーのマスクを被った集団」と思っただろう。不幸というかなんというかな行き違いだ。
タスはちょっと呆然としていたが、また喋り出した。
「ああ……わたし達はそんなことは知らないからな。大きな邸なので、貴族か商人の住まいだろうと」
「うん。わかるよ。俺も、最初に井に行った時、よくわからなかった。それに、門が二重になってたりとか、謎だった」
「ああ、そうか」
タスは口をもごもごさせてから、続ける。
「それで、わたし達は、とにかく食糧をさがそうとした。人間達は多くなかったし、槍で威嚇したらおとなしくなったからな。だが、伝糸持ちが……ああ、そういうのもないのか?」
「ない」
「ではどうやって、外に連絡したんだ。わたし達が来ているとわかったようで、貧弱だが武装した人間達が雪崩を打って這入ってきた」
「え」
ああ……誰かが通報したんだ。
「あのね。通報用のスウィッチがあって、それを押すと警察……警邏隊がすぐに来るようになってるんだよ」
「はあ……?」
「人間は伝糸をつかえないけど、伝糸みたいなことができる装置があるの」
タスはちょっと百面相したが、納得したようだ。こっくり頷いている。
「あとね、貧弱な装備って、それって防刃ベストとか防弾チョッキとかだと思う。見た目は布だけど、かなり丈夫な繊維だから、もしかしたらレットゥーフェルの槍でも切り裂けないかもよ」
「そんなことはありえない。がらすを持っていたんだぞ。あれくらいはなんでも」
「それも、透明な樹脂でできた盾だから。盾が透明だったら、自分の身をまもれて、相手の様子も見えて、便利でしょ」
「意味がわからない」
それはそうだ。俺も、こっちの魔法や特殊能力には、日々面喰らってきた。
「とにかく、そういう丈夫で透明な物質があるんだよ」
「がらすではないのか」
「寧ろどうしてがらすだと思ったの」
「特殊な効果が付いているのかと。なら、それそのものを壊せばいい」
あー、そういうことはあるか。
タスの勘違いは、わからないでもないものだ。俺は小さく数回頷く。「わかるけど、違うから」
「それで、あんなにかたかったのか」
「ねえタス、あのさ、人間を……」
傷付けたの、とか、殺したの、とか、訊こうとしたのだが、うまく言葉が出てこない。タスは生きる為に仕方なくしたことで、でもその場に居たひと達はまきこまれた訳で……。
あんまり、考えたくない。ほーじくんの封印が原因といえなくもないのだから。
「マオ。お前なら、わかるか? わたしの仲間が突然、死んだのは、どうしてか」
はっとタスを見て、ああ、と呻いてしまった。忘れてしまっていたが、これはタスの仲間の死についての話だ。強盗をした結果の。
誤字報告ありがとうございます。助かります。
感想ありがとうございます。はげみになります。
ユラちゃんは努力の塊!




