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話が盛大にそれてしまったので、軌道修正する。
「知ってるなら話がはやいんだけど。あのね、俺、その少し前に、荒れ地に来たんだ」
「そりゃそうでしょうよ」ユラちゃんは姿勢を正し、ゴブレットをあおった。「あんた、およそ荒れ地に居るような格好じゃなかったって、警邏隊の人間が喋ってたらしいわよ。あの……ダストってやつを助けた時」
それも、レフオーブルの情報網にひっかかったらしい。まじでこわいなシアイル貴族の一部。
俺は膝立ちになって、ユラちゃんのゴブレットにヴァニラアイスと、りんごジュースを追加した。ミントの葉を数枚散らすと、ユラちゃんはにこっとする。
腰を下ろす。
「誰かにそこにほうりだされたんじゃないの。もし仕返しするって云うんなら、手伝ってもいいわよ。そう、まちに這入れなかったら、食糧でもなんでも、うちかリッターの家で手配するし。ほーじ、いいでしょ」
あ、朝云ってたの、そういう意味かあ……。
ほーじくんは面喰らったらしいが、リッターくんがなにか低声で云うと、こっくり頷いている。「マオが不便なの、やだから……ユラとリッターが、手伝ってくれるなら、嬉しい」
「あんたって結構素直じゃない。ああ、素直だから、ばかばかしい教義でもなんでも信じちゃったのよね。ほんと、世のなかって素直で純粋な人間に厳しいわ。わたしくらい賢ければ話は別だけど」
ちょっと感激したのと、ユラちゃんがほーじくんを傷付けないようにフォローしているのが可愛いのだが、それにかまけている場合ではないと気を引き締める。
「俺、自分の意思で荒れ地に居た訳じゃないけど、多分ユラちゃんが云ってるような感じじゃない」
「どういう意味よ」
「うーん。ほうりだされたのは、ほうりだされたんだけど、それって、人間の仕業じゃないんじゃないかと思うんだよね」
「魔物ってこと?」
頭を振った。うーむ、云いかたが難しい。
ほーじくんが助け船を出してくれた。
「あの、ユラ、リッター。マオは、よそから来たんだって」
ユラちゃんの顎ががくっとさがった。
表情をかえなかったリッターくんが云う。
「よそとは、開拓者の居たところか? それとも、実存者などの?」
「わからない……」
ほーじくんはゆるく頭を振って、俺を見る。「マオの云っていることは、ぼくには難しかった。ユラならわかるかもしれないけど、ええと。信じられないようなこと、聴いた。勿論、マオだから、嘘じゃないけど」
「疑いやしないわよ。そんな嘘吐いたってなんの得もないんだから」
ユラちゃんはじっと、見詰めてくる。「マオ、説明して。理解できるように、努力はしてみるわ」




