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「なんでもいいでしょ」
ユラちゃんは前を向いた。「あんたにとったら、見ず知らずの祇畏士が恩寵魔法を手にいれる機会を失ったってことなんだから、感謝しなさい。ほらトゥアフェーノ、歩くのよ」
……あ。
もしかして、ユラちゃん、祇畏士の戦力をそごうとしてくれたのかなあ。いやあ、それはないか。
なにか、彼女なりの深い考えがあるのだろう。ユラちゃんが自分のお金でなにを買っても、俺は口出しできることじゃなかったな。反省。
リャクークが歩き出し、俺は慌てて掴まった。
お昼の休憩時、ニニくん達とヨヨには馬車で仮眠をとってもらって、俺は仮の幕屋で、ほーじくん、ユラちゃん、リッターくんに、ヨヨが持っていた手紙について話すことにした。
その為にはまず、俺が異世界から来たことを、ユラちゃんとリッターくんに説明しないといけない。どういう訳だかタスも俺の話を聴きたいらしく、その場に居たので、タスにも。馬車は今、エクシザとチャタラ達で警護している。
「えーっと」
ひえたヨーグルトをミルクで割って、廃帝花の蜜をしぼったものをすすりながら、俺はどう切り出すか考えていた。四人も同じものを飲んでいる。
俺達は車座になっていた。俺の右にほーじくん、その右にリッターくん、その右にユラちゃん、その右にタス、タスの右に俺だ。大きな声を出さなくてすむように、距離は近め。
お匙でゴブレットの中身をかきまぜる。これにナタデココいれたいな。
「なにから喋ったらいいかなあ。あ、俺、ほーじくんと知り合ったの、荒れ地なんだ」
「知ってるわよ」
ユラちゃんが呆れ声を出した。「リオが、フォージくんとマオさんの出会いって運命的よねっ、なんてはしゃいでて、何度も聴かされたわ」
ユラちゃんの声帯模写はそれなりに似ていて、ほーじくんとリッターくんの頬がゆるんだ。しかし、何度も聴かされたとは。ちょっとはずい。
「それにリオって、でもサキちゃんとマオさんだって運命的なの、本屋さんで同じ本をとろうとしてたんですって、とかなんとか云ってたわよ。ああ、ミューくんは弟さんのおかげでマオさんと知り合ってすぐにお茶したんですって、とも。あの子っていろんなことを恋愛に結び付けようとするから、話してて疲れる時があるわ。アエッラは楽しそうに付き合ってるから信じられない。他人の色恋沙汰なんて、当人達の自由にしてりゃあいいじゃないの。犯罪でもない限りまわりがとやかく云うことじゃないわ」
ユラちゃんはぐんなりと、せなかをまるめた。どうやら、恋バナに興味がないらしい。後半の意見にはまったく同意する。




