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ユラちゃんはああ云ったけれど、魔物が出てくると彼女は特大の魔法をつかってそいつらをすぐに殲滅した。これに関しては、ほーじくんも俺も、当然剣で戦っているリッターくんも、かなわない。勿論、タスやエクシザ、マルジャンにヤラも。
なにしろ、ユラちゃんは魔法を豪快につかう。俺が雷を苦手としているからか、一番得意らしい万雷や百雷は使用を控えてくれたけれど、燼滅とか零雨、颶風、落星といった、それぞれの属性の最上級魔法とされている魔法を、惜しみなくつかうのだ。
聴いた話だと、そういう大きな魔法というのは、効果が大きく消費魔力は多く、なにより範囲の指定が難しくて、味方や周囲の建物もまきこんでしまうものらしい。
のだけれど、ユラちゃんは俺達に一切の被害を与えず、敵の魔物だけを攻撃していた。それも、リャクークの上で、だ。掴まるのが俺達の体力では大変なので、俺もユラちゃんも武器は持っていない。つまり、武器による魔力や魔法の効果の上昇もない、のである。
「なによ、案外多いのね。来る時はこんなに出なかったわよ」
ユラちゃんは面倒そうに云いながら、魔力薬を口へぽいと投げいれる。タスが舞い降りて、魔物の死体の還元をはじめた。エクシザもどすどす歩いてきて、死体をついばんでいる。あらわれたのはさそりとやすでで、ユラちゃんが颶風で一気に片付けた。もの凄い風とおそらく雨も発生させている、竜巻のようなおそろしい魔法なので、俺は雷系のに次いで風の魔法も苦手かもしれない。
彼女の戦闘スタイルというのはまったくはっきりしていた。まず特大の魔法で敵を殲滅する。そしてすぐに魔力薬で魔力を補う。その繰り返しだ。
金銭的な余裕がないとできない戦法だが、余裕があったとしてもまず、特大の魔法をつかって文句を云う余裕がないのが普通だ。それだけの魔力を持っている人間はめずらしい……と聴いている。俺だって、昏冥つかったら結構疲れる。その後偸利でなんとかごまかしてるだけ。大体、大きな魔法といえ、一撃必殺なのがまず凄い。
規格外な魔力にちょっと呆れてしまった俺に、ユラちゃんはちらっと目をくれた。「なんか文句あるの」
「ないよ。そうじゃなくて、ユラちゃんそんなに魔法つかって疲れないのかなって」
「収納空間になんでもぽいぽい投げいれて平然としてる人間に云われたくないわ」
苦笑とともにそんなことを云われてしまった。俺はうっと詰まる。
ユラちゃんは髪をぴんと払う。
「等級、増やしたのよ。試験やなにかでも役に立つし、魔力は多くて困るものじゃないしね」




