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「あー……」
カルナさんがそれ以上なにも喋らず、ミエラさんが継いだ。
「わたし達は、歩きでも、大丈夫です。それに」
「なに云ってんの。無理でしょ」
ユラちゃんがばっさり切り捨て、ミエラさんは口を噤む。
ユラちゃんは手をひらひらさせながら続けた。「マオが助けるって云ってこんなに頑張ってるのに死なれたら、こっちは寝覚めが悪いのよ。大体、この場にはわたし達が居るんだから、それってわたし達が失敗したみたいなものじゃない? こっちの経歴に傷が付くってことも考えてほしいわ。それにこいつしつこいから、いつまでもあの時こうだったああだったってぐちぐちぐちぐち云いそうだし。だからあんた達は馬車にのるの。これは翻しません」
なんだか俺にぐさぐさと矢が突き刺さった感じなのだが、それなりに当を得ているので反論できない。たしかに、ニニくん達になにかあったら、こうしてたらよかったなとかああしてたら大丈夫だったかもとか、いつまでも云ってしまうかも。
それに、ユラちゃんの提案は、ありがたかった。だいぶ暑さが和らいでいるといっても、荒れ地なのはかわらないのだ。
リャクークの上はたしかに、歩かなくていい分楽ちんだけど、日光からは逃げられない。けど、ユラちゃんがのってきた馬車は、箱みたいな形をしていて、だからつまり屋根があるのだ。直射日光を避けられるのは大きい。
ユラちゃんはリャクークを示す。「わたしとマオはこいつにのるわ。こいつ、マオとあんたをのせても歩けるんでしょ。あんたよりわたしのほうが絶対に軽いから、こいつにのっても大丈夫だろうし」
「はあ」
ニニくんが溜め息のような声を出した。ユラちゃんはぽんぽん云う。「マオ、なかで食べられるようにクッキーでも渡しておいてよ。あと、魔力薬も、ひと包み。そうだわ、ヨヨは馬車にのせたほうがいいわね。あいつ、戦えそうにないし」
「あ、そうだね」
「あの馬車四人のりだから、これで丁度ね」
「あの?」
ミエラさんが遠慮がちに云い、首を傾げた。ユラちゃんがそれを見上げる。「なによ、侍女」
「あ、わたしはそんなたいそうな身分では」
「じゃあ口応えすんじゃないわ。お黙り」
ミエラさんは棒を飲んだようになる。面喰らったらしいが、怒った様子はない。
カルナさんが云った。「お待ちください。あの、レフオーブル嬢たちは、祇畏士さま達と行をこなす為にいらしたんでしょう? 邪魔をするのは心苦しいですわ。もう充分、祇畏士さま達にはよくして戴きましたし」




