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幕屋の材料を収納し、リッターくんが座っていた椅子もそうした。マルジャンとヤラ、エクシザが、見回りから戻ってくる。「なにか居た?」
三人とも頭を振った。さいわいなことに、近くに魔物は居ないようだ。
俺は頷いて、三人と、砂の山のかげまで行った。リッターくんがまっすぐ立って、馬車の用意をしているのが、ちらっと見えて砂の山に隠れる。
「エクシザ、昨日のリッターくんのことだけど」
けん、とエクシザは鳴く。どことなく抗議したそうな雰囲気だ。怒られると思っているのだろう。
俺は苦笑した。
「大丈夫、怒るとかじゃないから。昨日のことは、不幸な事故だよ。っていうか、俺がもっときちんと説明しておけばよかった。ごめん。たしかに、リッターくんはいきなり近付いてきたし、警戒しても仕方ないと思う。ただ、怪我ですんだのは、お互いに凄く運がよかった」
リッターくんが死んでしまったら哀しいし、そうなったらエクシザにはもうまともな精神状態で接することはできなかった。使役していた俺の責任も大きいから、ロヴィオダーリ家からどういう報復があったかわからない。
リッターくんが……というのは、仮定であってもあんまり考えたくないことので、頭を振って思考を停めた。
「とにかく、これから西へ行けば、ああいうふうに無害なひと達も増えるから、エクシザは俺が合図するまで行動しないで。もしくは、俺やエクシザが実際に攻撃されるまで」
エクシザはぐぐぐっと鳴いている。不満そうだ。目付きが鋭い。
チャタラ達がそれを上目に見て、俺に目を向けた。俺は頷く。「マルジャンとヤラもね。俺や自分達が実際に攻撃されるまでは、なるたけおさえてほしい。それと」
ひと呼吸いれた。
「失礼なのは承知で云うけれど、みんなは魔物だよね? 特に、エクシザとタスは、強いので有名でしょ。ホートリットに、レットゥーフェルだから」
エクシザがくいっとくちばしをあげた。胸の辺りの羽毛を撫でて、自慢げだ。単純な子なのである。
「だから、人間にしてみれば、とてもこわい魔物ってこと。先手を打とうと思って、つっこんでくるひとも居るかもしれない。魔法で攻撃してくるひとも。でも、すぐに俺かほーじくんが説明するから、話が終わるまでは反撃しないでほしいんだ。俺達人間って、か弱いから、エクシザに蹴られたらすぐに死んじゃうかもしれない」
エクシザはまた不満そうになったが、次の俺の言葉で頷いた。「だから、もし話し合ってもわかってくれなかったら、その場合は俺が合図するから、その時反撃してね」




