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そういえば、コマちゃんがそんなこと云ってなかったっけ? 特別なつながりができる、みたいなやつ。違ったかな。
会話ができるようになるの、魔物自体が喋れる喋れないが重要じゃないのかもしれないな。駆使魔法をつかったからって、いきものすべてが喋る訳じゃないみたいだし。星明姫の昔話で、そんなのなかったっけ? 星明姫当人は竜と喋れたんだけど、まわりはそれを理解してなかった筈だ。
断定はできないが、使役しなくても人間みたいに喋れるレットゥーフェルタイプ、使役した後なら喋れるニーバグタイプ、使役しても喋れないチャタラタイプ、があるのだろう。で、使役後なら喋れるタイプは、使役している人間にしかそれが通じない。まあ、使役後に喋れるようになっても喋らない不精者も、なかには居るみたいだけど。
ヨヨは小首を傾げ、リッターくんの腕を軽く掴んでいる。指が短くて可愛い。「ヨヨ、俺はマオだよ。宜しくね」
「マオ……」
ヨヨは笑顔になった。数回、深く頷いている。安心したみたい。俺はそれに笑みを返してから、ほーじくんを見る。
「今の、聴こえた? ヨヨが喋ったの」
ほーじくんは戸惑い顔で頭を振り、リッターくんも同じような仕種をした。ユラちゃんが首を傾げている。
「もしかして、あんたにしか聴こえてないの?」
「みたい」
「ふうん……使役って便利なのね。ニーバグって、喋るやつは喋るらしいけど、普通は喋らないもの」
あ、そうなんだ。
じゃあやっぱり、使役のおかげで通じている、のだろうな。成程。使役って便利だ。「使役について、またあたらしいことがわかったわ。あんたと友達やってると得ねえ」
ユラちゃんは本気みたいにそんなことを云う。もしかしたら、本気かもしれない。
苦笑する俺に、ヨヨが小さな手を伸ばしてきた。俺は微笑み、それから、ヨヨがなにか持っているのに気付く。折りたたまれた紙だ。
「マオ。おとどけ」
「え……?」
「マオに。みか」
ヨヨが持っている紙をひったくった。俺の唐突で大きな動作に、リッターくん以外がびくっとする。ヨヨも怯えてしまったみたいで、リッターくんにしがみついていた。リッターくんは無表情に、ヨヨのせなかを撫でている。「マオ、どうした?」
俺は紙を開いて、両手で持った。目を通す。
見覚えのある、整った字だ。こちらの世界にはなかなかない、するするした手触りの上等な紙。白地に桜色がまざり、所々に金がはいっている、豪華だかなんなんだかわからない便箋である。
「水佳」
妹の字だ。
ヨヨが持っていたのは、妹からの手紙だった。




