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突如あらわれたニーバグだが、可愛いし、ニーバグと云えば修復者のお気にいりだ。
ミエラさんがにこっとする。昨日、ぐっすり眠れたのか、顔色は少しよくなっていた。
「なんだか、修復者が祝福してくれているみたいですね」
「そうよね」カルナさんがうっすら、苦笑らしいものをうかべる。「収穫に来ていたひと達から、はぐれたのかしら? グーグー、ニーバグちゃん、可愛いわね」
ニーバグに呼びかける時の喋りかたなんだろうか、カルナさんはちょっとおどけたみたいに云い、くすっとした。ニーバグがにっこりして、立ち上がり、くるっと回転する。
ニニくんが微笑んだ。
「あれも、封印か?」
三人がお手洗いに立ち、それまで黙ってくだものを食べていたタスが、ぼそっと訊いてきた。
ほーじくんが戸惑い顔で答える。「だと、思う。多分だけど……」
「あいつらは似たような見た目だからな。チャタラなら見分けはつくのだが」
タスの言葉に、ヤラが体を上下させた。いや、俺もわかる。チャタラって、個体差はそれなりにあると思う。顔だけじゃなく、脚の感じとか、体の感じとか、ひとりひとりだとわからないんだけど、並ぶとマルジャンとヤラにはかなり違いがあるのだ。顔があんまり可愛くないのは、全チャタラに共通。
俺は腸詰めをパンでくるむみたいにして、かじりついている。
「レットゥーフェルも、それなりに見分けがつくよ」
「そうか?」
「着てるものとか、かぶとで」
ああ、とタスは、おそらく苦笑した。レットゥーフェルは、全体的に似た雰囲気の格好ではあるけれど、かぶととか服がちょっと違う。金属製の防具の違いが、誰かを見分けるポイントになる。まあ、戦い終わってから気付いたことなんだけどさ。
話題になっているニーバグは、舟をこいでいた。疲れているのだろう。あちらの世界は、こちらのいきものにとってはつらい。
俺はニーバグの頭をぺたぺたした。「ねえ君、使役してもいいかな? 毒、ひきとってあげたいんだ。いやだったら、すぐに解除するから」
ニーバグは、おそらく封印されていたもの、だ。なら、まだ毒が体に残っているかもしれない。使役して、状態異常をひきとれば、もしかしたら喋る気になってくれるかもしれないし。
俺の言葉に、ニーバグはきょとんとして、小首を傾げる。使役がわからないみたいだ。魔王の知名度ってあんまり高くないみたいなんだよなあ。魔物の間でも。
俺はニーバグの額(多分)を、指でつついた。
「使役」




