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幕屋の垂れ幕をあげた。なかにはヤラと、起きたばかりらしいミエラさんカルナさんが居る。どちらも顔色はよくなくて、布が外れた額の印が、禍々しく見えた。あれってほんと、目につくな。髪の毛が少しあっても、関係なく見えている。
俺は思考を振り払う。「おはようございます」
「おはようございます」
ふたりの声は揃ったが、張りはない。かさかさしていた。俺はなんとか、微笑む。
「あの、ごめんなさい、わたし達随分、眠っていたみたいで」
「ああ、大丈夫ですよ。魔物の所為でした。退治してもらいましたから」
退治しましたから、と云いそうになって慌てていいかえたのだが、ふたりには気付かれなかったようだ。
「あの」カルナさんがおずおずと云う。「レティアニナは……?」
「あー、タスと一緒の筈なんですけど」
「あら。それなら、心配ないですね」
カルナさんとミエラさんの表情が、少しゆるむ。どうも、タスはカルナさんとミエラさんにも、信頼されているみたいだ。
「そうだ」
はっとした。ふたりは気を失っていたから、ユラちゃん達が来たことを知らない。説明しておかないと、会った時に吃驚してしまう。
俺は微笑んで、説明する。
「あのう。実は昨日、おふたりが気を失ってから、俺とほーじくんの友達がここまで来たんです」
「友達……ですか?」
ふたりはちょっとだけ、いぶかしそうにした。
「はい。ああ、えっと」
なんと云ったらいいかわからない。「俺達をさがしに来たみたいで」
「ああ。一緒に、行をしようとしておいでなのかしら」
カルナさんがそう云いながらミエラさんを見、ミエラさんが数回、小さく頷いた。えーっと、違うんですが。
だが、ふたりはそれで納得してしまった。カルナさんが痛々しい微笑みになる。
「マオさん達のご友人なら、とてもお強いのでしょう。ニニが無理をしなくて、すむわ。開拓者が、わたし達に、特別に目をかけてくださっているみたい。ねえ、ミエラ」
「はい、カルナさま」
またしても開拓者賛美がはじまってしまった。俺はなんとも云えない。
ふたりは身繕いするというので、ヤラについていってもらった。顔を洗うのにお水が必要だが、彼女達にそれをつくりだす魔力が残っているかどうか、わからない。
俺はふたりとヤラを見送り、食事を準備する為に、出入り口からはなれたところに陣取った。
外で用意してもいいが、なにかの拍子に砂が舞いあがって食器にはいってくる。ユラちゃんががっかりする顔は見たくない。




