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リッターくんが淡々と云った。「それはあとで、幾らでも訊けるだろう。ほーじ、どうだ? そいつは、お前が封印した魔物なのか」
「ん……あの……わからない」
ほーじくんは頭を振る。
「なによ、もう」
ユラちゃんは溜め息を吐いて、それから額をおさえた。「ああ、ごめんね、ほーじ。怒ったのじゃないの。よく考えたら、ニーバグに限らず、魔物なんて同じ種族ならおんなじような見た目だものね。調教師ででもないと、見分けなんてつかないわ」
ユラちゃんはそうフォローしたが、ほーじくんは羽をすぼめた。
「ごめん」
「怒ったんじゃないって云うのに」
ユラちゃんは溜め息を吐く。
ニーバグはクッキーをすぐに食べ終えた。ぺろぺろと、指についたクッキーくずを舐めとっている。「まだ要る?」
ニーバグは大きな口をにっこりさせた。激しく頷いている。まだ必要らしいので、俺は茶葉を刻んで加えたクッキーを、ひと包み渡す。
ニーバグは包みをぱぱっと開いて、クッキーをもそもそ食べはじめた。その仕種は可愛いので、俺達の頬は自然にゆるむ。ユラちゃんが近付いていって、ニーバグを小突いた。「修復者が可愛がるのもわかるわ」
「お前に弱き者を慈しむような心があったのか」
「あんたね」
いつものユラちゃんとリッターくんだ。
ユラちゃんはぎろっとリッターくんを睨んでいたが、鼻を鳴らして顔を背けた。リッターくんは、いつもの無表情だ。
ユラちゃんは俺に対して云う。
「顔を洗ってくるわ。マオ、今日は馬車移動だからね」こちらへ背を向け、彼女は歩き出す。「あ、朝食お願い。とびっきりおいしいやつよ」
「はい」
くすくす笑いながら返した。ユラちゃんはずんずんと、どこかへ歩いていく。
ニーバグは気になるが、俺達も身支度だ。その後には、ユラちゃんの為においしい朝ご飯を用意しないといけない。久し振りに食べたらまずいわ、なんて云われないようにしないと。
用を足し、歯を磨いて、顔を洗った。タスをさがしたが、見当たらないので、還元は諦める。
ユラちゃんとリッターくん、ふたりがのってきた馬車のトゥアフェーノの様子を見るに、荒れ地にはいってそんなに時間は経っていないらしい。なら、もう荒れ地の西の端が近いということで、魔物に対してそこまで神経質にならなくてもいい。
それに、いざとなったらふたりは大きな戦力になる。それを頼りにするのは申し訳ないが、情況的にそうせざるを得ない。なるたけ迅速に、丁寧に、サポートにまわろう。




