3683
俺はほーじくんの腕を優しく叩き、撫でる。それから宥めるように云う。
「ほーじくん。ほーじくんは、知らなかったんだから、仕方ないよ。封印したら魔物がどんなふうになるかなんて、知ってるひとのほうがめずらしいんだから。ね? それに、魔物を封印するのはいいことだって聴いてたんでしょ。みんなが、そう云ってたんだから」
「ぼくは自分で考えるべきだった」
ほーじくんは涙声でそう返してきた。洟をすすっている。「ぼくはなにも考えてなかった。みんなが云うことをばかみたいに信じてた。ぼくが見たり聴いたりした訳じゃないのに、魔物を封印するのはいいことだって思ってた。だから、魔につかれてるマオにも酷いことして、マオの世界のひと達にも迷惑かけて、ぼくはもしかしたら沢山のひとを殺しちゃったのかもしれない」
「ほーじくん」
「マオ、庇ってくれなくって、いいよ。ぼくがやったことは、ゆるされない。死んだひとが居なかったとしても、怪我をしたひとは居る。怪我をしたひとが居なくても、死ぬほどこわい思いをして、これからずっとそのことで苦しむひとが居る。ぼくはリッター達だけじゃなくて、優しい神さまの世界に、マオの大事な世界に、酷いことを……」
後は言葉にならない。ほーじくんはすすり泣き、両手に顔を埋めた。
俺はなにも云えなくて、ほーじくんを抱きしめる。なにを云ってもほーじくんは納得しないだろう。自分を責めるだろう。
ままならない。
ほーじくんが泣きやんでくれないので、幕屋へ戻る機を逸した。ほーじくんが哀しんでいる姿をいろんなひとに見せるのはいやだし、ふたりで毛皮にくるまっていればなんとかなると判断して、俺はほーじくんを宥め続けた。それでいつの間にか、眠ってしまった。
肌寒くて目が覚めると、ほーじくんが居なくなっている。そのかわりのように、枕許にエクシザが居た。俺と目が合うと、ぶっと鼻を鳴らす。あまり、機嫌がいいようではなかった。
上体を起こし、目をこする。砂のまじった目やにが落ちる。乾燥しているので、咽がちょっと痛い。「エクシザ、おはよ。ほーじくんは?」
エクシザはけんと鳴いて、顔を振った。その方向に居るみたいだ。
俺は毛皮のローブから這い出して、一番軽いローブを羽織る。残りを収納して、立った。エクシザが示したほうへ向かう。ほーじくん、大丈夫だろうか。昨夜は結局、ずっとすすり泣いていた。俺はばかみたいに、なにか云いながら眠ってしまった。




