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「男のひとの髪が長いと、こっちと反対で、怒られて切られたりするなあ。ああ、子どものうちだとね。大人になったら、そういうのは基本自由だから、好きな髪型にしてるひとも居る」
奇抜な髪型だと、やっぱりなかなか見ないものだが、モヒカンとかはその辺でも普通に居る。こちらの世界的には、フェードとかツーブロックは女装の範疇だろうな。
ほーじくんがなにも云わないので、心配になって顔を見てみると、凄くいやそうな顔になっていた。
「ほーじくん?」
「……あ。ごめんなさい。マオの、世界には、修復者は、居ない?」
修復者。
あ、そっか。修復者の加護は、男なら髪に、女なら歯に、だ。だからこちらのひと達は、男は髪を、女は歯を大切にする。
俺は苦笑した。最初は修復者の加護が目的だったとしても、今ではそれ以上に、「男らしさ」「女らしさ」の象徴になっている。ほーじくんはディファーズで生まれ育っていて、異性装には根本的に違和感や嫌悪感があるだろう。
異性装を子どものうちに強制される(=頭髪検査で髪が校則に定められているよりも長かったらバリカン出動)、というのは、だから、ほーじくんには恐怖の習慣なのだ。修復者云々の問題もあるだろうが、それ以上に異性装強要を嫌悪しているらしい。
俺は笑い声をたてそうになってこらえた。小さく頭を振る。砂が少し、髪に弾かれて、顔にあたった。
「それは、よくわからない。こちらほど、神さまの存在が、はっきりしてないから」
「はっきり……?」
「そう」頷く。「世界中で、いろんな神さまが信じられてる。唯一絶対の神さまが居て、その神さまはなんでもできてすべてのものをつくったんだって云うひと達も居るし、どうやってできたかはわからないけどたまに出てきて警告を発したり助言をしてくれるんだってひと達も居るし、いろんな神さまが協力して世界をつくったんだってひと達も居る」
ほーじくんは混乱しているみたいで、目をすばやくしばたたいた。それが可愛くて、俺は結局ふふっと笑ってしまう。
ほーじくんが絶佳をつかった。ほんの少しだけ光るように、彼はうまい具合に調整している。
「マオ?」
「ごめんね。でも、ほーじくん可愛いんだもん」
ほーじくんはちょっと口を尖らせる。「ほーじくん?」
「……可愛い、だと、ぼく、子どもみたい」
「子どもだよ」
ほーじくんの頬っぺたをつついた。「大人になるまで、お兄さん待っててあげる」
尊大なものいいなのに、ほーじくんは照れたみたいににこっとした。そういうのが可愛いんだってば。




