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下方向へも熱は逃げていく。だから、俺とほーじくんは毛皮のローブにくるまるみたいになった。蓑虫状態だ。
ほーじくんの手を掴む。手はあたたかい。このままずっと、一緒だったらいいのになと思う。また、はなれてしまったら、哀しい。
「あのね、俺、よそから来たんだ」
ほーじくんの表情を見ることはできなかった。こわくて、だ。俺は臆病なのだ。
ほーじくんの手が、俺の手をぎゅっと握っている。
「よそ?」
「うん。多分ね」
少し、ほーじくんに近付く。
ほーじくんは黙って、俺を抱きしめてくれる。
「神さま達が、生まれたところ?」
「それはわからない。けど、少なくとも、この世界じゃない。俺は、別のところから来た。別の世界から」
ほーじくんの腕に力がこもる。俺はほーじくんの肩に額をおしつけるみたいにして、喋る。
「ほーじくんに、初めて会ったの、荒れ地だったよね」
「……うん。覚えてる」
「あの日なんだ。こっちに来たの。ほーじくんに会う直前に、気付いたら荒れ地に居て、あてどもなく歩いてたらダストくんが助けてくれて、馬車で村まで行くことになって」
俺はできる限り、順序立てて話した。自分がこちらの世界に来てから、しばらくのことだ。
気付いたら荒れ地に居て、ダストくんを見付け、ダストくん達が俺が困っているので村までつれていってくれたこと。
どうやら別の世界らしいと気付いたこと。
村でしばらくの間、お世話になったこと。
「どうして、別の世界だって、わかったの」
ほーじくんがかすかな声で訊いてくる。俺は苦笑する。
「えっとね。俺が生まれた世界では、羽とか角のついた人間は居ない」
「え……」
「それに、男のひとは大概、髪が短いし、装飾品もあんまりつけない。耳飾り用の穴があいてないひとはめずらしくないよ。お化粧も、着飾るのも、女のひとのほうが多いかな。それに、俺が育った国では、あらたまった場所以外なら異性装でも普通だし、最近はあらたまった場所でもそんなに煩くはないかな。そもそも、自分に関係なかったら、他人の格好に興味ないひとが多いかも」
少なくとも俺は他人の着ているもの、身につけているものに興味はない。家族全員そういうタイプだ。
冠婚葬祭などのマナーはまもるし、ドレスコードのある場所に行くのなら遵守するけれど、こだわりは自分にも他人にもほとんどない。もし、俺が突然髪を剃ってしまっても、妹がいきなり極彩色のソバージュにしても、両親は特になにも云わないか、おっ似合うじゃないかなんて云ってくるかのどちらかだろう。




