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ほーじくんは、ばかじゃないのだ。いろんなことをしっかり考えて行動してる。だから、ほーじくんが自分の意思で封印を解ける情況なら、御山か荒れ地を選んだのじゃないだろうか。
でも、そのことはユラちゃんには云わなかった。彼女は上機嫌な感じで、喋り続けている。ユラちゃんにしては口数が多い。なので、口をはさむ気になれない。
「封印が自然に解けるっていうのは、もっと可能性が低い気がしたわ。自然に解けることがめずらしいから、封印は解けないものって印象があるんだもの。わたしはきちんと記録を調べてるから、解けないものじゃないってことは知ってるけどね」
なんだか自慢げに胸を反らし、ユラちゃんはあいた手をちょっと振る。
「解けないのじゃなくて、解けるまでが長いのよね。もしくは、封印している間に、封印された魔物は死ぬんだと思う。竜が封印されてしばらく経って、封印が解けたけど、とても弱った状態だった、っていう記録もあったわ。ええっと、裾野での話よ。裾野の南のほう。御山の資料は目を瞠るものがあるけれど、ほかの場所で集めると数段おちるものしか手にはいらないから、ほんとに骨が折れるったら」
「大変なんだね」
「まあ、資料集めをしたのはわたしじゃなくて、サーパルティルク夫人達なんだけどね。どっちにせよ、シアイルや裾野で手にはいる資料は、伝承を記録したものがほとんどなの。御山には、どこから手にいれたのかわからない、他地域の公的な記録があったりするのよ」
「え、凄い」
「なによ、あんた奉公人のくせに、知らないの?」
頭を振る。俺が凄いと思ったのは、御山にそういう資料が沢山あること、ではない。それなら、俺だって知っている。図書館や書庫の整理は何度かやったし、先生がたが手にいれた資料を運ぶこともあった。
「そうじゃなくて、ユラちゃん、そういう資料も閲覧できるんだと思って。ほかはともかく、封印に関する資料だから、制限がかかってる筈だし」
「ああ……そうね。わたし、成績がよかったから、這入れる場所が増えたのよ」
ユラちゃんの声が少しだけ沈む。「まあ、そんなとこ。閲覧さえできれば、あの図書館は便利よね。つかえない状態だと腹がたつけど、それは成績でなんとでもなるし」
その成績がままならないものなのだが、優秀なユラちゃんにはそれを云っても多分通じない。ちゃんと勉強すればいいことでしょ? と返されるのはわかりきっているので、俺は笑いをこらえて頷いた。彼女の傍若無人なところは、俺は好きだ。




