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時間はどんどんすぎていく。夜はどんどん深くなる。
俺達は砂の丘の上までのぼって、じゅうたんを敷き、その上に座った。星空が綺麗だ。
べつに、お星さまを見る為にここまでのぼってきた訳じゃない。それは、副次的なこと。
少し高い場所なので、これなら周囲からなにかが来てもすぐにわかるし、見える。魔物に不意打ちされることがないし、誰かにぬすみぎきされるおそれもない。そういう思惑だった。
荒れ地で用心してしすぎることはない。魔物はいつでも、うじゃうじゃ居る。それに、話す内容が内容だ。ひとに聴かれたくはない。
幕屋の裏から、ニニくんを抱えたタスがゆっくり歩いて出てくるのが見えた。タスはいいお兄さんのようだ。
俺はマサーラーチャイをマグにたっぷり注ぎ、全員に配った。甘さ控えめの雑穀クッキーも一緒だ。俺の右にユラちゃん、左にほーじくん、その向こうにリッターくんが居る。
このとりあわせはめずらしい、と、ちょっと思った。それで、くすっとする。大口を開けてクッキーを頬張ったユラちゃんが、もごもご云う。
「なによ?」
「なんでも。あ、さっきの質問、まだ答えてなかったね。俺は、魔王」
ユラちゃんとリッターくんが、一瞬動きを停めた。ほーじくんは、甘みのない雑穀クラッカーを、両手で大切そうに持ってかじっている。さっき、特別に渡しておいた。ほーじくんをひいきするのはやめない。
っていうか、ひいきだとわかるひいきでも、したかったらする。
ほーじくんもみんなと同列、なんて欺瞞は、もうやめた。だって同列にはできない。俺にとって彼は、特別なひとだ。
とても。
クッキーは少しずつ減っていく。ユラちゃんがマサーラーチャイをおかわりした。「魔王って、使役と……」
「魔物退治」
「え?」
「魔物に対して、攻撃の効果が大きくなる職業加護」
「はあ……成程ねえ……」
ユラちゃんはちょっと、頭を振る。俺はクッキーをかじり、続けた。「それに、状態異常無効もあるよ。毒はほぼきかない。魔法だと、ちょっときくけど、すぐにもとに戻る」
「それで、嘔吐剤が効かなかったのか」
リッターくんが納得したふうにこぼした。ユラちゃんが溜め息を吐く。
「状態異常無効に関しては、この間教えた筈だけど」
「聴いていなかった」
「あんたね」
ふたりが寸の間、目をかわした。と、ユラちゃんがくすくす笑い出す。俺もつられて笑ってしまった。
リッターくんは小首を傾げ、雑穀クラッカーをかじるほーじくんを見たが、ほーじくんも首を傾げた。鏡のような動きで、可愛い。




