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「で、魔王なの、黒騎士なの。それとも、使役をつかえる職業って、まだあるのかしら。もしかして、特殊能力なの?」
すすり泣くほーじくんを、リッターくんが手をしっかり握って低声でなぐさめる、というそれなりに感動的な場面なのだが、ユラちゃんにはそんなことは関係ないようだ。そんなふうに、ぽんぽんと質問してくる。
俺はちょっとうるっときているし、リッターくんとほーじくんが額をくっつけてもそもそ喋っているのが微笑ましくて、可愛いなあと思っていたので、ユラちゃんの言葉があまり頭にはいらない。あ、リッターくんがほーじくんの顔を拭う手付き、子どもっぽくて可愛い。「ほーじ、もう泣くな」
「うん……でも……」
ほーじくんは泣いているけれど、その泣き顔には、ちょっとした安心も見てとれた。リッターくんもユラちゃんも、謝ったほーじくんを責めないし、ただ頷いてくれたから、だと思う。
ユラちゃんが降りてきた。袖を掴まれ、そちらを向くと、ぎろっと睨まれている。「あ、ごめん、なんだっけ」
「あんたの職業を訊いているのよ」溜め息まじりに云われた。「わたしが調べた限りだと、使役をつかえるのは魔王と黒騎士。もしかしたら特殊能力にもあるかもしれないけど」
「ああ……え、調べた?」
「調べたわよ。あんたが戻る可能性がどれくらいかね。当然じゃないの」
当然……なのかな。うーん。
いや、当然じゃないと思う。
俺が学んだこちらの世界の常識だと、多分一般的な反応は、「俺と関わっていたのを極力なかったことにし、存在を忘れる努力をする」だ。
ほーじくんが俺の封印を解こうとしていたのだって意外というか、常識的におかしなことだし、ユラちゃんが俺が戻るかどうか調べていたというのもおかしい。それに、ふたりがここに居ることも。
あれ、そういえばリッターくんとユラちゃんは、どうして荒れ地に居るんだろう。
俺の疑問をよそに、ユラちゃんは腕を組んで首を傾げる。宙を見ていた。
「可能性って云うのは、条件がわかってないと判断できないでしょ。だから面倒だけど、あんたが実際なんていう職業なのか、しぼりこもうとしてたの……まあ、無理だったわ。資料が少なすぎる。それにそもそも、わたしの知識も少ない。経験もね。ついでに、智慧者に接触を試みたけれど、会えないひとが多かったし、会えたとしても悪しき魂や魔王のことを教えてくれたのはひとりだけだった。そのひとの話も、単なる伝承。要するに、わたしには大きすぎる仕事だったってこと」
ユラちゃんははきはきとそんなことを云い、何故か満足そうに微笑んだ。




