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ヤラはカルナさんとミエラさんを見てくれている。ふたりとも、寝息を立てていた。
「マオ」
泣きやんだ俺に、ユラちゃんは静かに云う。「元気そうね」
「うん」
ユラちゃんも、とは、云えない。魔法の灯の許でしっかり見ると、彼女の目のまわりが黒ずんでいるのに気付いたからだ。睡眠もヴィタミンも、足りていないらしい。
リッターくんが上体を起こした。ほーじくんと手をつないだままだ。
「先程の、ホートリットは?」
「俺が……」
「駆使してるんでしょ」
云い淀んだ俺の言葉をひったくるみたいにして、ユラちゃんが継いだ。小さく頭を振っている。「ほんとに、あんたって、おかしなやつ。ねえ、リッターの怪我ももういいみたいだし、外で話しましょ。ここだと、具合の悪いひと達に迷惑よ」
ユラちゃんはベッドを飛び降り、外へ出ていった。リッターくんもベッドから降りる。俺とほーじくんは顔を見合わせる。
リッターくんは、ほーじくんが支えて歩いた。怪我そのものは塞がったといえ、リッターくんが怪我で血を失ったことはかわらない。少し、ふらついていた。
外に出ると、ユラちゃんが馬車から出てくるところだった。防寒対策もばっちりみたいで、ユラちゃんは毛皮のローブを羽織り、同じようなものを持ってやってくる。「リッター」
「ああ」
リッターくんがぎこちなくそれをうけとって、肩にかけた。ほーじくんも一緒にくるんでしまう。それが可愛くて、俺はちょっと笑った。
リッターくんの眉の険がとれた。ユラちゃんも、うっすら笑う。
「いつものマオね」
「うん?」
「気にしないで」
俺は首を傾げたが、それ以上説明はない。
収納空間から毛皮のローブを出し、羽織った。四人で少し、歩く。ユラちゃんは、幕屋から距離をとりたいらしかった。
理由は多分、これから、俺がどうして封印されたか、というような話をするからだと思う。カルナさんやミエラさんには聴かせることはできない。
砂の丘を少しのぼった。疲れてあしを停める。幕屋は、それなりに後ろのほうにある。
ユラちゃんも立ち停まった。ついっと、空を示す。「見なさいよ。開拓者ってどこまでもけちなのよね。今夜は月がないわ」
空を仰いでみると、ユラちゃんの言葉どおり月はなかった。けち、というのは、どういう意味かわからないが、云いたいことはなんとなく理解できた気持ちになる。
リッターくんがうっと云って片膝をついた。ほーじくんが支えて、再びまっすぐ立たせる。砂はずるずると動き、俺達はじっとしているつもりでじっとできていない。




