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ほーじくんはベッドの傍に座って、リッターくんの手を握っていた。心配そうにリッターくんの顔を見ていて、たまに額を触ったり、小首を傾げて胸の辺りを優しく叩いていたりする。ほーじくんなりに、リッターくんを看護しているのだろう。リッターくんの顔は、ほーじくんの袖で拭われて、血はまばらに、かすかに残っているだけだ。
すでに、怪我の治療はしてもらっている。ヤラがほーじくんを治療し、ヤラとニニくんでリッターくんを治療した。
ニニくんは怪我人の気配を察したみたいで、ふらふらしながら戻ってきたのだ。ひどく酔ったひとのようなおぼつかないあしどりだった。
その時ユラちゃんが、ニニくんに肩をかしていたタスに警戒を見せたが、さっきのエクシザのこと、ほーじくんがつれてきたヤラのこともあるから、攻撃はしないでくれた。警戒はずっと解かなかったが。
ニニくんは治療を終えるとまた、タスにべったりはりついて、タスは仕方なしという感じでニニくんを抱えていた。
ニニくんはリッターくんという、「祇畏士でも、短髪装飾品なし男性でもない、知らない男性」にこわさがあるみたいで、幕屋のなかに居るのを拒否した。
リッターくん、髪飾りはないが、ピアスはしっかりばっちりつけているし、体格も俺やほーじくんよりいいからな。身長はほーじくんより低いと思うけど、胸板の厚さが違う。ニニくんには、恐怖の対象らしい。
タスも充分体格がいいけど、顔が人間とはまったく違うし、俺とほーじくん以外とはほとんど口もきいていない。自分に積極的に関わろうとしない相手は、安心できるみたい。
なので、ニニくんは今、タスと一緒に外に出ている。寒くないように毛皮のローブを渡しておいたし、マルジャンも一緒だから、大丈夫だろう。
リッターくんが小さく呻いて、目を開いた。「リッター?」
ほーじくんがほっとしたみたいな声を出す。リッターくんは自分の手をほーじくんがしっかり掴んでいるのを見て、数回瞬き、ああ、とかなんとか云った。
「大丈夫……?」
「ああ。問題ない」
「よかった」
ユラちゃんがリッターくんのベッドの枕許に、どすんと腰掛けた。必要以上に大きくて煩い動作だ。リッターくんがユラちゃんに気付き、云う。
「お前は黙っていても煩いのだな」
「あんたは口を開くと煩いわ」
ユラちゃんはぴしゃりとやり返して、こちらへ手を伸ばした。「マオ、お菓子頂戴」
いつものユラちゃんとリッターくんで、俺は安心とか動揺とか、それからふたりにも心配させたんだろうなとか、色々考えてしまい、また泣いてしまった。ユラちゃんがうろたえている。




