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そこにサボテンが生えていたら、それを食べればリャクークが安心する。リャクークはあの魔物が嫌いみたいで、そわそわと落ち着きなく歩きまわっていた。収納しておいたサボテンも食べようとしないのに、お水を飲ませる時につかっていたお匙を口にいれようとしたりしてしまっている。ストレスがたまるといろいろのみこもうとする、というのは、本当らしい。
ほーじくんがもう一度舞いあがって、水場の位置を確認し、俺を案内してくれた。俺はリャクークの腕をひっぱるみたいにして、そちらへ向かう。リャクークはいやがっていて、なかなか歩かなかった。
さいわい、水場はそんなに遠くなくて、サボテンは豊富にあった。運のいいことに、廃帝花も少しだけ生えている。ただ、花は咲いていなくて、実も少しだけだった。
リャクークはサボテンに気付くと、ぱっと表情を明るくしてとたとた走っていき、ちょっとかじった。嬉しそうにぴいと云う。それから、濁った水溜まりに顔をつっこむみたいにして、水分をとる。しばらくぶりにリャクークの声を聴いた気がする。
リャクークにはしばらく自由にさせてあげることにして、俺は廃帝花の実を採集した。数はそんなにないが、収納空間がある以上、物資を持ちすぎると云うことはない。
ほーじくんも手伝ってくれて、廃帝花の実は思っていたよりも集まった。サボテンをちょっとずつ食べているリャクークを見ながら、並んで座り、廃帝花の実を食べる。日はだいぶ傾いていて、西の空が不穏なオレンジ色になっている。
「もうそろそろ、ひとが住んでる辺りに着くかなあ」
「うん……」
ほーじくんは、いまいち反応がよくなかった。また、心配しているのだろう。俺の悪しき魂が、いつどこで発覚するか、ということを。
俺はほーじくんのせなかを軽く叩く。ほーじくんは項垂れている。髪の毛で、表情は見えない。
「サーダくん、居ないね」
「うん」
「やっぱり、帰っちゃったのかな」
「うん」
「俺、ちゃんと謝るから。ほーじくんに負担かけてごめんなさいって」
ほーじくんは頷いているらしい。廃帝花の実は、半分かじった状態で持ったままだ。ひとが暮らしている場所が近付くにつれて、ほーじくんはますますナーヴァスになってきている。
なにかはげますようなことを云おうと思ったが、言葉が出てこない。俺はただ、ほーじくんのせなかを撫でている。太陽がますます傾いていって、空の上のほうはゆっくりとくらくなっていく。空気がひえてきた。
ほーじくんがぱっと、顔を上げた。




