3650
タスとほーじくんで、カルナさんとミエラさんもベッドに寝かせた。それぞれ、柱の支えにしているベッドなので、場所はちょっと離れている。
俺は三人にお水を与えた。ただのお水ではなくて、廃帝花の花を潰してしぼった汁をまぜてある。これなら魔力を補える。
むせないように、慎重に飲ませた。そうしていると、ニニくんが目を覚ます。
はっとして、ニニくんは上体を起こす。ベッドから滑りおちそうになって、ぱっと、タスが両腕で抱き留めた。
「おい、癒し手」
ニニくんは瞳が不気味に揺れていて、呂律もまわらない。ごめんなさいと云っているように聴こえるが、本当のところはわからない。
タスが軽々と、ニニくんを抱えなおし、ベッドへ戻した。ニニくんは相手がタスだとわかっているのかいないのか、あおざめた顔でタスを見、タスの手をぎゅっと握りしめている。タスが溜め息を吐きながら肩越しに俺を見た。「おい」
「ニニくんはタスがお世話して」
「ふざけるな……」
ニニくんはぶつぶつ、なにか云っている。いまいち、現実と夢の区別がついていないらしく、その顔は恐怖にひきつっていた。タスがいやそうに云う。「わたしはお前の体に興味はない。お前を傷付けるつもりもない。そんなことをしたら、マオにどんな目にあわせられるか」
「ヤラ、燕息お願い」
ヤラがとんできた。「タス、ニニくん見ててね」
「何故……おい……」
タスがまだなにか抗議していたが、俺はその場を離れた。
カルナさんとミエラさんは、まったく目を覚まさない。カルナさんがいびきをかいていて、なにか病気じゃないだろうかと不安になったのでヤラに診てもらったが、そういうことではないみたいだ。単に、これまでの疲れと緊張が、一気に襲いかかってきただけだろう。
ミエラさんは、そこまで危ない状態には見えない。彼女は多分、眠ったほうがいい。そうすることでしか恢復できないものはあると思う。
女性陣の汗を拭ったり、呼吸をたしかめたりした。ニニくんのベッドを振り返る。タスはああ云っていたが、ニニくんのベッドの傍に座り、ニニくんと手をつないだ状態でむすっとしている。たまに、自由なほうの手で、ニニくんの汗を拭ってあげていた。「優しいね、レットゥーフェル」
「うん」
ほーじくんの言葉に頷いて、俺はちょっと笑った。タスが欠伸している。
三人の看病はタスとチャタラ達に任せ、俺とほーじくん、それにリャクークは、幕屋からはなれた。さっき戦った時に、ほーじくんが、少しはなれたところに水場を見付けたのだ。




