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蜂の巣みたいだなあ、と思った。つくりかけで遺棄されたやつ。あれに似ている。
ただし、そのつくりかけ蜂の巣は、もぞもぞ動いていた。あれが死体に寄生し、最後には蟻塚になるらしい。やば。いや質感似てるけど。
大きくなったということは、それだけ体力や魔力を吸いとられている、つまりこっちのダメージがなかなかのものであるということだが、見えるようになったのはありがたい。俺はぞろぞろ出てきてこちらへやってこようとするそいつらに狙いを定め、偸利をつかい続けた。タスも、上空で偸利をつかっている様子だ。とられたものはとりかえす。それだけの話である。
ほーじくんがもう一度、清絶をつかってくれた。これがあいつらには、かなりきいた。足が停まる。あしがあればの話だが。
それへ、偸利をつかうと、あいつらはパチンと弾けるようにして消える。一体、なにでできているのだろう? 材質が謎。
偸利の効果もあるだろうが、数を減らしていくと、眩暈はおさまった。立ち上がる。ほーじくんが、俺のすぐ傍に降り立つ。「マオ、大丈夫?」
「うん。もう少しだから……ちょっと、支えてて」
甘えてみると、ほーじくんは微笑んで、俺をぎゅっと片腕で抱いた。素直に思ったことを口に出すのって、いいな。
清絶と偸利のコンボで、全部を片付けた。パチンと弾けて消えるので死体は残ったようには見えないが、すーっと黒紫のものがうっすらたちのぼるので、少なくとも魔がぬけるじょうたいにはなったのだとわかる。
ほーじくん、タス、エクシザ、ヤラにマルジャン、全員が無事だ。それはいい。リャクークも、砂に潜って難を逃れていた。砂が動くのでまだあいつらが居るのかと思ったら、リャクークがとびだしてきて、うるうるした目でほーじくんに突進していた。魔物とか戦闘がこわいみたいだ。気持ちはわかる。
ほーじくんが魔を滅却し、タスは念の為に、あいつらがもぞもぞ動いていた辺りを中心に、広範囲を還元した。
砂も還元され、大きく窪地のようになってしまったが、もしまだ見えない状態の(多分、蟻とかダニくらい小さいんだと思う)あいつらが残っていたとしても、これで安心できる。ほーじくんがもう一度滅却をつかい、ほっとできた。
の、だけれど、三人はなかなか目を覚まさない。
もともと、過酷な条件で荒れ地を数日さまよっていたのだ。今だって、装備を調えて食糧もあるといっても、体力はおちているし、魔力だって万全ではない。そこにあいつが来て、体力と魔力を吸いとったのだから、たまらない。




