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……あー。
ああ、そうか。そうだな。それは、俺が度々考えていることに、近い。
ずっと疑問なのだ。どうして悪しき魂が存在し、魔王だの黒騎士だのという職業があるのか。
だって、それが人間にとって害にしかならないものなら、それを持ってしまった人間が排除されるしかないのなら、そもそも悪しき魂やそういう職業の人間をつくらなければいいじゃないか。
開拓者にはできないことだ、とは云わせない。よその世界から人間をつれてきたり、世界を人間にとって住みやすい環境にしたりしたんだぞ。それくらいできるに決まっている。
もしも、なにか制約があってできないのだとしても、やりようはある。悪しき魂持ちの人間に天罰を下す、というのが一番確実だろう。
じゅうたんの柄を間違えていたからという理由で、あれだけの砂嵐を起こす神さま達である。西の一の門なんて、触ったら死ぬ、という話もある。天罰というのは強烈で、避けようがない。
悪しき魂を持って生まれるまではシステム上のバグとして仕方ないのだ、というのなら、それでいい。だったら、悪しき魂を持っている人間には天罰がくだって死ぬ、というパッチをあてればいいだけの話である。
ふんふん頷く俺に、タスは呆れたような目を向けてきた。ぎょろり、と目が動く。
「なんだ?」
「いや、俺もずっと考えてたから。開拓者が本当に人間のことしか考えていないんだとしたら、悪しき魂を持った人間が生まれてくる理由ってなんだろうって」
タスは鼻を鳴らす。「そんなことを考えるのか。ひまだな」
「うーん、そこまでひまでもないけど」
「神の考えなど、わたしにはわからない。お前にもわからないだろう。ただ現実、わたしは命をもらったし、還元や魔法の力も持っている。これらはすべて、神の与えたものだ。だから、人間だけが神にまもられているというのはおかしいと知っている。それだけのことだ」
「うん。そうだね」
納得がいったので頷いたのだが、タスはうろんそうに見てくるだけだった。適当に流されたと思ったのかもしれない。そんなつもりはない。本気で納得している。
実際のところ、タスの云うことは筋が通っている。タスは魔物だけれど、だからって神さま(達)がタスから還元の力や魔力をとりあげたりはしていない。ていうかそもそも、タスは魔物だけれど生きている。この世界の常識的に、それは神さまに命をもらったということになるのだろう。




