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ごみを出すと、タスはその近くに移動し、俺はさがった。還元がはじまる。「還元」
ごみが素にかわった。すぐにふわっと、素は宙にうかびあがる。花吹雪を逆再生しているような感じだ。きらきらと漂っているが、一瞬後にぱっと散った。すぐに、見えなくなる。
たしかに、その場にとどまっている時間が短いような気はする。レントで見た還元は、もっとこう。時間が長くかかった。とんでいって、消えるまでに。
サキくんが還元で琥珀をつくった時もそうだった。地面に穴を掘って、そのなかで木の枝や落ち葉を還元したけれど、素はもっと「重たい」感じで、穴のなかに滞留していた。幾らかはふわふわと舞っていたけれど、あの時は蛍みたいだと思った。それも、数が少ないやつ。
だから、ほとんどの素は穴のなかにこもっていて、幾らかだけふわふわしていた、ということだろう。かぶせた土の隙間から、素がもれだしてはいたけれど、それも大量ではなかった。
比較するとよくわかる。ここだと、素は還元直後にばっと拡散し、ちょっとの間その辺りでゆっくり漂っているが、すぐにとびちってなくなってしまう。
野菜やくだもののへたと、木の枝と落ち葉だから、まったく違うものを還元したから素も違う動きをする、ということではないと思う。
神の恩恵がうすい、というのは、こういうことか。ここは恒常的に、素が足りていないのだろう。だから、素がすぐにとびちってなくなる。だから、素におびきよせられて魔物がやってくる可能性は低い、と。
還元を終わらせると、タスは横目で俺を見た。
「わたしが神を語るのが、おかしいか?」
「おかしいって訳じゃないけど、ごめん、そぐわない気がする」
正直なところを云うと、タスはちょっと笑ったらしかった。
「お前にも人間らしいところがあった」
「え?」
「いや。人間は、自分達だけに神が微笑んでいると思っている。それは事実なのか?」
「えーっと、云ってる意味がよくわからない」
また、正直に云う。タスはにやっとした。多分。
「お前はお前だな。いや、人間にはおかしなことを信じているやからも居るので、その手合いかと思った。違うらしい」
「おかしなことって?」
「神が自分達人間を特別に愛している、と。ならどうして、わたし達魔物は存在する? 開拓者は、人間だけを優遇している訳ではない。我らだって、開拓者がこの世界に存在することをゆるしているのだから、神の恩恵をうけている。レットゥーフェルだろうと、ホートリットだろうと、チャタラだろうと、それはかわりない」
感想ありがとうございます。はげみになります。




