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「ほーじくん、起きてる?」
横になったほーじくんの傍まで行って、低声で云う。ほーじくんの反応はない。俺は微笑んで、枕許にランプを置き、ほーじくんのせなかにくっつくみたいにして横になった。睡眠不足は、熱中症のもとだ。
タスは、あんまり納得した様子ではなかったけれど、とにかく寝めと云って、今は自分も、出入り口のすぐ傍で転がっている。タスはすぐに眠れるし、すぐに起きることができる。戦闘に特化しているなあ。
ほーじくんの髪をそっと撫でる。こうやっていられることがどれだけ恵まれているのか、どれだけしあわせなのか、俺はとてもよく理解している、つもりだ。俺は、幸運なのだ。
ささやく。「ほーじくん、好きだよ。ずっと一緒に居たい」
「ぼくも」
吃驚した。
ほーじくんは寝返りを打って、かたまっている俺を両腕で絡めとる。抱きしめられた。驚いたのと、はずかしいのとで、声が出ない。
ほーじくんの顔は見えないけれど、声はちょっとだけはずかしそうだった。
「マオ、だいすき」
かたい爪が、俺のせなかにくいこむ。「二度と裏切らない。危ない目にあわせない。酷いこと、しない」
ほーじくんの声は段々と、しめっぽくなっていった。涙ぐんでいるのか、すんと洟をすする。
「だから、居なくならないで、マオ」
ああ。
そうか。
異世界から来た俺なんかより、ほーじくんはずっとこっちで育っていて、だから、別地域への移動には能力証が必要ってことくらいわかってる。そして俺が、能力証をとれないってことも。
ほーじくんのせなかに、苦労して手をまわし、ぱたぱたした。
「ごめんね」
「……あやまらないで」
「ううん。俺が、心配させてたから。大丈夫だよ。居なくならない」
そうだ。ほーじくんの将来がどうとか、家族がどうとかなんて、お為ごかし云わない。
自分が、ほーじくんのキャリアを潰すのがいやで、こわくて、だからはなれていたかった。ほーじくんからきらいって云われたくないから、はなれていってしまったら淋しいから、好きじゃないみたいに思いこんでた。
全部々々自分の為だ。ほーじくんのことを、心の底から考えてた訳じゃないと、思う。
ほーじくんの為、なら、ほーじくんを本当に大切に思ってるなら、俺がなやむことはない。ほーじくんが居るところに居ればいい。一緒に居ればいい、ってこと。
それでどうなったって俺は満足だ。悪しき魂が発覚して捕まるのなら、それでもいい。
ほーじくんを裏切ることはない。




