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汚れてしまったせっけん液を捨てた。「マルジャン、お湯、出してもらえるかな」
マルジャンは頷いて、たらいにお湯をはってくれる。俺は粉せっけんを溶かす。まだまだ、汚れものはある。マルジャンは、俺がたらいにはいっているから、ぬるめのお湯をくれた。
せっけんが溶け、俺はそこへ汚れものを放り込んでいった。それを踏む。下着類だ。汗で一番汚れているから、最後にした。時間がかかりそうなものはあとに持ってくるのが、洗濯でいらいらしないこつだと思う。最初に一番時間がかかるものを持ってきてしまうと、それが終わったあとに続きをする気力がなくなる。最後に持ってくれば、これで終わりだからと耐えられる。
ほーじくんは、俺と一緒に居る限り、ディファーズには戻れない。
裾野内を移動するだけなら、俺はどこであっても、能力証は必要ないんだと思う。緑珠さんが、オルメラだったかなあ。そこに行く時に、能力証を持っていたようなことは云っていなかった。レントでも、能力証の提出を求められてはいない。裾野はそういう部分が適度にぬるい。
でも、裾野からディファーズへ移動するとしたら、ロアかシアイルを通ってになる。そこでなら確実に、能力証の提出を求められるだろう。パスポートみたいなものだ。一番確実な身分証だから。
そして、ディファーズでだって、能力証を求められることは間違いない。その時に、俺はなにも出せない。入国拒否くらいですめばいいが、強制的に井へつれていかれたら、困ったことになる。
だから、ほーじくんと一緒に居るとしたら、裾野内、ということになる。
ほーじくんから故郷を奪うような真似をして、いいんだろうか。
ほーじくんにそんなに負担をかける権利が、俺にあるのか?
せっけん液を捨てた。収納空間のお湯で、ゆすぎをはじめる。ゆすげたものはしぼって、マルジャンとヤラに乾かしてもらった。ふたりは俺が開いておいた収納空間の口へ、乾いた洗濯ものをいれてくれる。
「ありがと」
そう云ったら、ふたりは困ったみたいな、哀しそうな顔になった。しゅしゅ、と云うけれど、俺にはその感情がなんなのか、わからない。首を傾げ、それから、ごめんわからない、と云って、作業を黙々と続けた。
お湯を数十回かえて、ゆすぎが終わった。周囲の砂はお水を吸って、直後は湿っぽいのだけれど、すぐに乾く。保水力が少ないのだ。だから、ここで畑をしたりは、不可能なんだよな。それで、荒れ地を還元して、緑豊かな土地にしようと頑張っているひと達が居る。
この世界は、どことなくいびつで、壊れかけている感じだ。




