3637
考えても無駄なことは考えたくないのだが、汚れものは思っていたよりもたまっていて、俺はだから、無駄なことを考え続けた。
普通に考えたら、御山から勝手に長期間離れているのだ。それも、不可解(だと思う。多分)な情況で姿を消した。
俺は山道を通っていない。ということは、多分、それ以外の場所を通って御山から出た、と判断される筈だ。そうじゃなかったら、瞬間移動を持っていたと思われる。
猫の騒動の時、それにトゥスミア先生が亡くなった時にも、御山に無断で侵入することがいかに難しいかという話は聴いている。でも、御山から出るのがどうか、という話は、そこまでしなかった。
無断で這入るよりは格段に楽だと思う。山道を通って空き間をぬけて、というのは、私兵が居るから絶対に誰かに見られるけど、それ以外の場所であれば命を省みなければできるのじゃないかな。
もしなにか、魔法でもかかっていてそれができないとしたら、そんな大切なこと誰かが教えてくれている。奉公人同士は、そうやって情報を共有していた。勿論、いろんなことを調査する特別チームはあったけれど、それはまた別の話だ。先生がたや学生さんの名誉に関わるかもしれない事柄を扱うから秘密の業務、というだけで、知らないと困るようなことまで奉公人同士なのに教えないということはありえない。
御山への無断侵入、御山からの無断脱出、どちらが難しいかと云えば当然無断侵入だ。そんなもの不可能に近い、と誰もが云う。けれど無断脱出のほうは、痕跡は残るみたいだが不可能でもないらしい。
崖を降りていく、とか、そういう俺には確実に不可能な手段だけれど、気が動転していて、といういいわけならきくかもな。痕跡が残っていないことに関しては俺はいいぬけできない。ただ、そういうものはすべてわからないですます、というのは、不可能でもないと思う。
だとしても、無断欠勤でくびになる可能性が高いな。そうなったら、レントで暮らす、かなあ。ほーじくんと、なるたけ近いところに居たい。また、四月の雨亭で、雇ってもらえるだろうか。そんな虫のいいこと、あるかなあ。
だめだったとしても、お金はある。ぼたんも沢山持っている。ほーじくんが下山するのを待って、そして……。
そして?
そして、どうするのだろう。ほーじくんと一緒に居たいけれど、俺は能力証をとれないから、法的に「家族」になることは絶対にできない。
ほーじくんと、どこでどうすごしていく?
感想ありがとうございます。はげみになります。




