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ほーじくんは俺を見て、くいっと肩をすくめた。
「あにさま、ぼくのこと、凄く心配してた。ひとりで眠らせてくれなくて、おんなじベッド……あにさま、目の下がまっくろになってた」
「ああ……」
サーダくんは、いいお兄さんだからな。ほーじくんが居なくならないか、死んでしまわないか、とても心配しているんだ。寝不足になるくらいに。
ほーじくんはまた、足許を見ている。
「それなのにぼく、あにさまが眠ったから、東に行けるんだと思った」
「ほーじくんは悪くないよ」
俺はそう、即座に云い、溜め息を吐いた。「サーダくんに会ったら、俺、ちゃんと謝る。ほーじくんを不安にさせてごめんなさいって」
ほーじくんはなにか云いたそうな顔を俺に向けたけれど、結局なにも云わなかった。
俺達は黙って、リャクークにひっつくみたいにしてつったっている。リャクークがぴいと鳴いた。
しばらくして、俺達は幕屋を解体し、出発した。ミエラさんが眩暈はおさまったと云ったからだけれど、まだあると思う。少なくとも、頭痛はあるみたいで、リャクークのせなかでたまに顔をしかめ、こめかみの辺りをもみほぐしていた。それが無意識っぽくて、ちょっとすると歯をくいしばって手を下ろす、というのを繰り返している。
昨日よりも遅い出発になってしまったので、お昼の休憩もすぐだ。その間、幾ら移動したくても、太陽が照りつけてくるので無理だ。
とはいえ、やはり西へ移動するほど暑さは和らいでいる。簡易の幕屋でご飯を食べながら、そんな話をタスとした。ほーじくんは傍で、黙ってまるくなっている。眠っていると思ったんだけれど、ちらっと見ると目がしっかり開いていた。ゆっくりと瞬きして、なにか考えているふうだ。
三人は横になって、眠っている。ミエラさんは顔色が悪い。ほとんど灰色と云ってもいいくらいで、血の気はまったくなくなってしまった。はやく荒れ地を出ないと、体が保たないかもしれない。
あ、そういえば、レットゥーフェルとの泥仕合の前に、スナガミさんから頭痛に効くっていうお薬もらったっけ。あれ、ミエラさんにきかないかな。あっちの食べものは、こっちのひとに食べさせても平気だったけど……お薬はどうなんだろう。うーむ。
「マオ」
「あ、ごめん、なあに?」
俯いてしまっていた。タスを見る。タスは目の下辺りをちょっとこする。「今日辺り、収穫や行に来た人間といきあうかもしれん。わたしやホートリットは大丈夫だが、チャタラ達が攻撃されたら、一撃でやられるかもしれんぞ」




