3633
「申し訳ありません」
「もうちょっとおなかに優しいものを出したらよかったですね」
ミエラさんは幕屋の、一番涼しいところで、横になっている。体の左側をしたにして、まるまっていた。ニニくんとヤラがたまに燕息をかけ、カルナさんがタオルで、掌の汗を拭いてあげている。ミエラさんは汗をかいているのに、ちょっと震えていた。
そういえば、なのだが、ホットミルクはおかわりしたものの、ミエラさんはおかゆを半分くらいしか食べていなかった。ほかふたりと比べて、お匙はあまり動いていなかったと思う。それに気付いていたのに、おかゆが口に合わないのかな、くらいにしか考えていなかった。
俺はミルクパンに、お砂糖とお塩をとかしたお湯をつくっていた。マルジャンに熱の魔法を停めるよう合図し、ミルクパンの中身をお水でうすめ、さます。お匙と一緒にミエラさんの枕許へ置いた。「おなかが痛かったら、今度からすぐに云ってください。それに、無理に食べなくていいですから」
「本当に、ごめんなさい……大丈夫だと思って……それに、食べないと、力が出ないし……」
ミエラさんは目許を覆う、しめらせたタオルを、頭におしつけるみたいにする。吐いた後だから眩暈と頭痛がするそうで、それで出発を見合わせたのだ。
カルナさんに、ミルクパンの中身を少しずつ飲ませるように云い、その場をはなれる。まだおかゆはきつかったんだろうか。もう少しうすいおかゆがよかったかな。俺はああいう状態になったことないから、わからない。
タスは澄ました顔で、幕屋のすぐ外で槍の素振りをしている。流れるような動きを見せていた。そういえば俺はタスに勝ったんだと思い出した。もの凄く幸運だった、としか云いようがない。
「あの女、大丈夫そうなのか」
「多分ね」
動きを停めて訊いてきたタスに、そう返した。それから肩をすくめる。「今日はミエラさんに、リャクークにのってもらうよ。じゃなきゃ、一日ここでじっとしてるか」
タスは唸ったが、反対はしない。
幕屋から出てすぐ、砂の丘のかげに、リャクークは半分埋もれていた。ほーじくんがドライフルーツや雑穀クラッカーをあげている。リャクークは朝に弱いみたいで、起きるのが少し遅かった。単に、トゥアフェーノが本来夜行性だということだろう。
せなかを撫でる。昨日、そこにのっていて気付いたんだけれど、リャクークのせなかにはほんの少しだけれどくぼんでいるところがあって、そこに体がひっかかるから掴まっているのは楽だった。こうやってせなかを撫でているだけだとわからないくらいの、ほんのわずかなくぼみだ。
誤字報告ありがとうございます。助かります。




