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ああ、俺のことを考えていて気もそぞろだった、とは云っていたけれど、もしなにか大きな動きがあったのなら、さすがに覚えていると思う。
例えば、ハイオスタージャ家が改易される、とか。
ニニくんは、それを心配しているふうだった。ルクトくんのことも心配していたけどね。それに、カルナさんもハイオスタージャ家のひとで、多分心配していると思う。だから、ほーじくんにそれを訊きたいんじゃないだろうか。
ハイオスタージャ家が改易されていないとしても、なにか大きな罰があったり、領地が減らされるとか位が剥奪されるとか、可能性は沢山ある。それこそ、いやになるくらいに。
もし、ニニくんにほかにきょうだいが居るのなら、罰とは関係なくその縁談がだめになる、なんてことも起こりうるだろう。
カルナさんが云っていたが、荒れ地おくりになった人間に関わり合っていたと思われたくないのは勿論、その人間の家族、友人にも関わり合いになりたくないのが、ディファーズでは顕著だと思う。だからこそ、荒れ地おくりになったトリエーリ嬢と友達だった、ディンフィア嬢ヴァルグイス嬢シーパス嬢の三人は、そのあとディファーズ寮内でほとんど孤立している。
それに、ユラちゃんが云っていた。皇帝を批判する本を出したひとと知り合いだっただけで、ユラちゃんのお姉さんの縁談はなしになったのだ。
それくらいのことが当然のように起こるのなら、荒れ地おくりになった人間の家族と結婚したくない、というのは、過剰反応ではない。
ニニくんでも、カルナさんでも、気持ちを少しでも楽にしてほしい。
そういう諸々を話すのは、もしかしたらディファーズの上流階級の内情をさらすことにつながるかもしれないし、平たく云うと情報漏洩になるかもしれない。だから、俺が居る場所では話しにくいだろう、と思って、離れた。余計なお世話かもしれないが、心配事が常にあるというのがどういう気持ちなのか、俺はわかっているつもりだ。決して、いい気分じゃない。
ハイオスタージャ家がなくなっている、ということもありうるけれど、それならそれで、知っておくべきだろう。自分たちが荒れ地から戻れば、復権できる、という希望になる。
マルジャンの傍にかがみこんだ。ヤラがとことこやってくる。「マルジャン、ヤラ、なにか装備できる? かぶととか」
ふたりは顔を見合わせ、しゅう、と鳴きながら、頭を振った。鎧、くつ、服、と、いろいろと例を出すが、どれも身につけたくないようだ。




