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頭を振って思考を断ち切った。三人が低声でなにか喋っている。カルナさんが微笑んで、ミエラさんの髪に触れた。どうやら、結い直すみたいだ。ニニくんが自然に、にっこり笑う。少しは、安心してくれたのかな。
俺は、ほーじくんの袖を軽くひいた。「ちょっと、マルジャンと喋ってくる。防具、装備できるならしてほしいから」
「うん……」
ほーじくんはどことなく心配そうな声だった。俺の気持ちが沈んでいるのを、なんとなく察してくれたらしい。自分の失態を思い出して、とまでは気付いていないと思う。
ちょっと嬉しいみたいな、複雑な気持ちになった。俺はほーじくんに頷いて、ぺたぺたと彼の頭を撫で、その場を離れる。マルジャンと話したい、というのもあったけれど、それだけじゃない。
ディファーズ出身の三人は、祇畏士であるほーじくんにだけなら、これまで話していないなにか話すかもしれない。
俺は見た目だと、ロアかシアイル出身に見えるらしい。それは何度も云われてきたことだ。サキくんには、顔はロアかシアイルの出に見える、と云われたし、リッターくんにはシアイル出身だと思われていた。
だから、祇畏士と一緒に居るという信頼があっても、ディファーズ国内の諸々は(特に、上流階級のあれやこれやは)話しにくいだろう。だってそれは、ディファーズのあまり誉められない部分をさらすことにつながるかもしれない。
特にニニくんは裾野暮らしが長くて、ディファーズ的な考えがうすまっているみたいだ。いかにもディファーズらしい裁量やなにかについては、はじているふうでもあった。いや、それよりも、自分の失敗を悔やんでいるのかなあ。俺にはそうは思えないが、ニニくんは癒し手を拒否したことを、失敗だったと思っているらしいから。
そうじゃない。職業を強制するのがおかしいんだ。それは本人の自由であるべきだろう。自分の人生なのだ。自分以外は誰も責任を持ってくれないだろうが、それって選択はなるたけ自由であるべきということでもあると思う。
だから、適職ってやつに、ちょっと腹がたつ。不自由な職業しか選べないひとが大勢居ることに、腹がたつんだ。
ほーじくんは、少なくとも数日前まで、ディファーズの正しき民として生きてきた。お兄さんの行へ同行し、各地へも魔物退治で行っていたらしい。じゃなきゃあ、あれだけの魔物を封印できない。ディファーズ国内のニュースも、少しなら知っているだろう。




