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ミエラさんは意外にも、拳士という、格闘系職業。素手なら強いというやつだ。伽羅子さんの格闘姫の、何ランクか下の職業。武器は必要ないとのことなので、渡さなかった。
そのかわりにというか、とおまきに見えていたヤラを手招いた。ヤラはぴょんと一回はね、おなかをじゅうたんにこすりつけるみたいにして、ずりずり移動してくる。おしりが左右に揺れた。あの歩きかたって、たまにするけど、蟻みたいだなあ。
しゃがみ込み、目線をなるたけヤラと同じくらいにした。ヤラは俺をじっと見ている。チャタラはどれだけ見ていても、目があんまり可愛くないんだよなあ。動きとかは可愛いんだけど。
「ヤラ、ミエラさんは拳士だから、彼女が手を怪我したら、できるだけはやく癒してあげて。優先してってこと。わかる?」
ヤラがこっくり頷き、任せろ、と云うみたいに、右前肢をちょっと振った。しゅるしゅるう、と鳴く。
それから、ヤラはミエラさんへ体を向けて、お辞儀をした。ミエラさんはそれに驚いたみたいでかたあしをさげたが、すぐに微笑んでお辞儀を返す。
「お行儀がいいんですね。宜しくお願いします」
ヤラは頷く。
ニニくんが感心した様子で云った。「随分、慣れていますね」
「チャタラをこんなふうに駆使できるなんて、やっぱり祇畏士さまと一緒にいらっしゃるかたは、違うわ。さすがですね」
カルナさんも感心したふうだ。俺は苦笑いし、ほーじくんは不機嫌そうに口を尖らせた。あ、くちばしみたい。可愛い。
ほーじくんの頬をちょんとつつく。ほーじくんは拍子抜けしたみたいに、表情をやわらげた。
武器を配ったら、次は防具だ。三人がつかえそうな防具を見繕う。
俺は鎧だのなんだのはなにもつけていないし、ほーじくんもそうだ。ほーじくんは、そういうものをつけているのを御山でも見たことがない。
そもそも、出会った時から、彼はよれっとした布製の服を着ている。多分、空を飛ぶのに、しっかりした防具は、重たいんじゃないかな。それとも、祇畏士はそういうものを装備しないんだろうか。こっちの世界、金属はなんぼでも採れるから、ちょっと「下のもの」として見てる。祇畏士がそういうものをおおっぴらに身につけるのがだめ、だったりして……それはないか。でもほかの祇畏士も、金属製の鎧を身につけていたり、かぶとを被っているひとなんて、見たことない。
ああ、俺は自分の意思で鎧だのかぶとだのはつけない。自慢じゃないが、あんなもん身につけたら重くて動けなくなるからな! 誰が装備するか!




