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カルナさんは戦士で、体力:良、魔力;可、速歩持ち。剣で戦うのならばできるとのことなので、いつぞやにレントの武器屋さんで買った剣を、ひとふり渡した。カルナさんはそれを、お礼を口にしながらベルトにはさみこむ。表情がやわらかくなった。
「これ、いいものですね」
「そうです?」
「ええ、とても」
そうなんだ。武器の善し悪しはまったくわからないので、剣に慣れているようなカルナさんがそういうのならそうなのだろう。
ふいっと、武器を買っておくように、と助言してくれた、リッターくんとユラちゃんの姿が、まざまざと思い浮かんだ。
別に意識して思い出そうとしたのじゃないのに、くっきりとふたりの顔や、仕種や、声の調子なんかがよみがえったのだ。ユラちゃんのふわっとした髪や、リッターくんがお握りを口いっぱいに頬張って変な顔になっているのとか、ふたりがぽんぽん云いあってユラちゃんがかりかりしているのとか。ユラちゃん、身をまもる為に魔法を買ったほうがいい、とも云っていたっけ。めずらしい特殊能力の人間が行方不明になることがあるから……危険があるから……。
リッターくんとユラちゃん、どうしてるだろう。
ほかの子達も。
ほーじくんに、みんなのことを訊く勇気が、今はまだない。ほーじくんが自発的に喋ってくれないからだ。彼は口が重たいタイプだから、単にうまく言葉が出てこないだけかもしれない。別にかわりがないから、喋ることがないと云うだけかも。
でもなにかよくないことが、彼の沈黙には隠れているような気がする。
それが俺の勘違いであってほしい。
呼吸を意識して、ふたりのことは頭から追い払った。
ほーじくんに、ミューくん達のことを訊く勇気は、少なくとも今はまだない。そして、ほーじくんは話してくれない。
今、俺からその話題を持ち出すことはできない。「こわさ」「おそれ」がどうしても先に立つ。荒れ地をぬけだすことができたら、訊けるかもしれない。
俺は臆病なんだ。
カルナさんが剣を鞘からぬいて、眺めている。鞘からぬく前にいいものだと云っていたから、なにかしら効果がついているのかもしれないな。装備したら効果を発揮するなにかが付与されているのなら、ベルトにさしこんだだけでそれがわかる。
「はこぼれしたり、つかいにくかったら、すぐに云ってください。俺、まだ沢山持ってますから」
「はい。ありがとうございます」
微笑んで目礼するカルナさんに目礼を返し、ニニくんへ顔を向けた。「ニニくんも、杖がだめになったらすぐに教えて。つかいにくくても」
「はい」
ニニくんは生真面目に頷く。俺も頷いた。




