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ニニくんは、俺とほーじくんが同意見で、ちょっとだけ安心したらしい。ぎこちなく微笑んで、目を伏せる。ああ、ほーじくんが太鼓判をおしてくれたから安心した、かな。
俺ひとりより、確実に、ほーじくんの意見も添えてあるほうが安心できるんだろう。祇畏士なのだ。説得力が違う。
魔王の説得力はどうかなあ。魔王ってだけで、意見もなにもないかあ。あー。
とはいえ、ニニくんはまだ不安そうだし、ルクトくんのことを話し続けるのは得策ではない。これ以上、無駄に精神的なストレスを与えたくなかった。神経系が暴走しそうだ。そもそも沙漠という厳しい環境に置かれているのである。
俺は話題をかえようと、収納空間から杖をとりだした。癒し手用の、そこそこいいお値段のものである。お値段相応に、効果付きだ。癒しの魔法の効果がほんの少し高まる、じゃなかったかな。
不思議な話だけれど、本当に、治療に用いる魔法ってこちらの世界では軽んじられているのだ。本当に意味がわからない。魔法でちょっとの怪我ならすぐに治るなんてありえない世界で育った俺にしてみたら、擦り傷切り傷を一瞬で治し、ちょっとの風邪なら簡単に治し、腕がとれてもくっつけ、骨が折れても即座にもとに戻せる癒し手は、尋常じゃなく凄い。
それなのに、癒し手向けの効果がついた杖は、それ以外の効果がついた杖と比べたら安い。
いや、わかるよ、多分癒し手に向いた効果(恢復魔法の効果アップとか、恢復魔法の消費魔力減少とか)がそもそも付与しやすいんだろうってことは。
だとしても、癒し手として大活躍できるだろう効果でも、貝貨数枚でどうにかできるっていうのは、まじで意味がわからない。要するに、供給過多だし売れないし、で安いんだろ? どうして売れない訳。
こちらの世界での癒し手の理不尽な不遇っぷり内心嘆きながら、ニニくんへ杖をさしだす。
「これ、持っててください」
「え、あ……いいんですか」
ニニくんは戸惑いながら、両手で杖をうけとった。俺は頷く。「ニニくんに、怪我の治療、頑張ってもらおうと思って」
「あ。はい。そうですよね」
ニニくんは三回、真剣な表情で頷く。「僕、頑張ります。癒し手として、きちんと皆さんを癒します」
率直な言葉が可愛らしくて、俺はくすっとしてしまった。ほーじくんも、ちょっとだけ笑っている。ニニくんは小首を傾げた。
「あ、でも、怪我はないほうがいいですよね。僕、不謹慎だったかな」




