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三人はきがえをすませ、ミエラさんが手で丁寧にニニくんの髪を梳かしていた。どうやら、魔力はそれなりに戻ったみたいで、三人とも頭を洗ったらしかった。
俺とほーじくんに気付いて、三人はぱっと立ち上がった。リボンなども置いておいたので、今はミエラさんは髪を紐で結っているし、カルナさんも髪を紐で固定しているらしい。どういう構造かわからん。
女性陣は、どうにか、丈の長いチュニックをドレスふうに着こなしていた。二枚重ね着しているらしい。横にスリットがはいっているので、ずぼんをはいていないと脚が見えてしまうのだが、ふたりともずぼんははいていないらしかった。ふたりとも体の横に腕をおろし、チュニックを掴んでスリットがひらかないようにしている。
俺は自分の気のきかなさにうんざりしながら、収納空間をひらき、裁縫道具をとりだした。ミエラさんにさしだすと、彼女はありがたそうに押し戴いて、まずカルナさんの裾を縫いはじめる。
女性達の身だしなみをじろじろと見ては悪いということで、俺達とニニくんは、ふたりから離れた。背を向けて、見ないようにする。ニニくんは俺よりも少し背が高い。「申し訳ありません、なにからなにまで」
「いいえ。お兄さんを助けなかったら、ルクトくんに合わせる顔がないので」
ニニくんは複雑そうな表情だ。顔色があまりよくない。
「大丈夫ですか? お水、要ります?」
「僕のことで、ルクトにまで迷惑がかかっていないか、心配していたんです」
ニニくんの声は湿っぽい。自分に降りかかった災難について話す時は、もっと冷静な声だったのに、今は違う。
「癒し手になるのをいやがるなんて。どうしてあんなばかなことをしたのかって、ずっと考えていて。夢に……きちんと、志望の職は癒し手だと書いて、そういう夢を見ます」
もごもごと、不明瞭な発音で云い、ニニくんは俯く。「ルクトが御山から追い出されたりしていないだろうか」
「大丈夫ですよ」やわらかく云う。「御山では、癒し手になるのを拒んでも罪にならない。だから、家族がそれをしたからって、奉公人がなにか云われることはありません」
ニニくんはまだ不安げだが、俺を見てちょっと頷いた。ずっと神聖公国の感覚で生きてきたのだ。俺の言葉は、理屈としてわかっていても、うまくのみこめないのだろう。
ほーじくんがぼそりと云った。
「自ら廃嫡を願い出るひとや、自分の能力値と相性が悪くてもどうしてもこの職業がいいって、変わった職にするひとも居る。御山は、気にしない」
ほーじくんなりに、なぐさめようとしたんだろう。可愛い。




