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ニニくんは言葉を完全に失い、ぽかんとしたまま黙り込んだ。カルナさんとミエラさんは口を覆う。どちらもあおざめている。
「ニニさま」
「レティアニナ、ああやっぱり、開拓者の思し召しよ」カルナさんがおそれるみたいに云う。「あんたのやったことも云ったことも、間違ってなんかいなかった。祇畏士さまと一緒に、あんたの可愛いルクトの友達が助けてくれたんだから、あんたは最初から助かることになってたのよ。なんてことだろう! 主の御業だわ……」
カルナさんは、水からあがってきたみたいに、苦しそうに喘ぐ。両手の指を絡ませ、顔を俯けて、額におしあてた。ミエラさんも同じような格好をする。女性ふたりはおそれるみたいに、小さく震えている。
ニニくんはあおくなって、胸をおさえ、呻いた。
それにしても、癒し手拒否と結婚拒否でアウトか。癒し手には、ちょっと抵抗しただけで、結局なってるのに。
服や装飾品を適当に出して、三人にはきがえるように云った。俺は、ちょっとまわりを見てくると、ほーじくんと一緒に幕屋から少しだけはなれている。女性達がきがえにくいだろうと思ったのだ。下着類も渡したからね。
女性ものの服はなかったけれど、裾野の男性は凄く長いチュニックを着ていることが多い。それを数枚、あとはディファーズふうの柄もののチュニックや、ベルトを置いてあるから、どうにか女もののように着こなしてくれるだろう。
俺は気にならないのだが、ディファーズ女性は異性装を尋常ではなくきらう。きがえをいやがることはないと思うが……服の下に男ものの下着を着けるくらいは、我慢してもらいたい。
くつのサイズはわからなかったので、十足くらい出しておいた。装飾品も、かごにはいったものをぽんと置いてある。ニニくんはつらい目にあったようだし、男らしい格好をして安心してもらいたい。
俺が収納空間からものをぽんぽん出すことに、三人はあまり驚かなかった。俺とほーじくんは、三人のなかでは主の御使いなのである。収納空間の特殊なつかいかたくらい、気にすることではないのだろう。
そもそも、ほーじくんと俺がふたりで、荒れ地のめちゃくちゃ深いところまで行に来たと、そういうふうに考えているみたいなのだ。
癒し手や還元士や、護衛の傭兵の役割を、俺と俺が「駆使」している魔物が担っている、というふうに。タスが還元をしているところも見ているみたいだし、それでそういう勘違いに拍車がかかっているのだ。あえて訂正はしないけれど。




